この記事を読んでいただきたい方:
中古の賃貸物件(アパート)の購入を検討しているが(もしくは購入済みだが)、前オーナーのメンテナンス履歴が不明のため、鉄骨腐食の修繕をどのように進めたらいいかわからないとお悩みのオーナー様、強度不安の鉄骨設備の継続運用をしたいオーナー様向けの記事です
アパートオーナー様から、共用階段の踊り場(階段と廊下をつなぐ平面スペース)の鉄部腐食に関するご相談がありました。中古で購入した賃貸物件であったため、建物や設備のメンテナンス履歴が不明なので、外から見た状況で工事判断をしないといけません。
この場合、実際に工事を始めないと確認できない場所の腐食に対処したり、隠れた腐食対策に対して事前に複数の工事方法を用意しておくなど、新築工事とは異なる経験や技術が必要になります。専門業者だからこそ「もしも」のときに柔軟に工法修正する実例をご紹介しています
鉄骨踊り場の補強方針
現地調査の結果、当初の補強方針は、踊り場の外周フレームである「胴差鉄骨」に別の鉄骨を増設するというものでした。これにより、床のデッキプレートや下地の鉄骨にかかる荷重を分散させることを目指しました。
鉄骨の床が抜け落ちてしまう事故は身近にあります。この人的被害に備えて補強することが工事の目的です。
参考:鉄骨通路の床(歩くところ)が崩落した事故
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230703-OYT1T50192/
デッキプレートも直接支える方法へ修正
しかし、現場で作業を進める中で、当初の計画以上に効果的な方法が見つかることがあります。当社はそうした現地での柔軟な工法修正ができるよう常に工夫しています。もちろん、当初の工事費用のままです。
当初の方針に従って補強箇所のケレン(鉄骨表面の錆びや古い塗膜を落とす作業)を始めたところ、胴差鉄骨だけでなく、床のデッキプレートも直接支える方がより効果的であることが判明しました。そこで工法をアレンジ。胴差鉄骨から梁を増設してデッキプレートを直接支えるように補強しました。これにより、当初の目標であった「胴差鉄骨への荷重分散」をさらに効果的に達成することができました。
このように、経年劣化による設備には、目視では分からない錆びや腐食が潜んでいるため、当初の工事方針よりも効果的な工法に修正できることがあります。限られた予算の中で、費用対効果の高い方法にアレンジすることで、オーナー様の利益を最大化できると考えます。
直接請負工事がもたらす柔軟な対応力
アパート設備のメンテナンス事情は、収支や建物の寿命、入居者様の状況など、さまざまな側面を考慮して予算と工事範囲を決める必要があるので、新築工事とはまた異なる悩みが尽きません。建物をいつまでも維持したいという気持ちはあっても、建物本体よりも補修した設備の方が長持ちしてしまうのでは意味がありません。中古物件のご購入を検討されているオーナー様には、建物や設備のメンテナンス履歴の有無や確認をおすすめします。
資産価値を維持しながら、限られた予算を最大限に活かすことがオーナー様の本懐だと思います。それに対して、工事の進行に合わせてより良い工法を提案し、多少のコスト差であれば誠意をもって対応することが、当社の理念です。
工法のアレンジについてオーナー様と直接話し合い、リアルタイムで最適な補修工事を進める柔軟な対応が、当社のような直接請負工事の最大のメリットです。鉄骨の腐食でお困りの際は、ぜひご相談ください。
要約Q&A
Q:中古物件を購入(運用)するにあたり補修工事で大事なことは?
A:前オーナーからの補修工事履歴を受け継いでおくことは大切です。手元にないときは管理会社にご相談されることをお勧めします。当時の工法や補修時期がわかることで、その後の補修工事プランに大きく貢献します。工事履歴がないと場当たり的な対処しかできないことがあります
Q:工事の途中で工事方針が変わることがある?
A:工事履歴が不明である場合、鉄骨が化粧資材に囲われて損傷具合がわからない場合、塗装されていて腐食が隠されている場合など、お見積ご提出当初では予見しきれない錆びが潜んでいる可能性があります。工事進行に合わせてより効果の高い工法にアレンジしていくことがあります。もちろん事前にオーナー様にご相談します。
Q:直接請負工事のメリットは?デメリットは?
A:メリットは「もしもの事態」にオーナー様と業者が直接連絡ができることで柔軟に乗り越えることができます。工事費用も中間マージンが発生しません。デメリットは鉄骨工事以外の資材トラブルに精通していないことです。