この記事を読んでいただきたい方:
築古の建物の廊下(共有床)が「腐食で抜ける危機」を回避した緊急工事例のご紹介です。※残存数年を目処にした延命措置です。10年以上の中長期的な延命措置ではありません。
「外廊下の床が抜けそうだから調査して欲しい」とご連絡をいただき、現地を拝見に伺いました。
オーナー様からは「建物の維持年数は、あと数年レベル」と事前にお聞きしていたので、緊急措置も「数年」を見据えた計画で考えていきます。
外廊下の床が抜けそう・・・
というか、抜けてる箇所もある状況
たしかに床の劣化が深刻です。アパート2階をご利用の方からは「歩くと何となく不安定で怖い」との声も。
廊下の床の防水膜は寿命を失い穴が空き、床を支える鉄骨フレームもサビ腐食によって強度が大きく落ちていました。オーナー様は、今年(2020年)発生した「アパート廊下の床抜け事故」を心配しておられます。
廊下の奥まで進むと、すでに床の一部が欠損して抜けている箇所がありました。床を支える鉄骨フレームがむき出しになっていて、サビ腐食でボロボロになっています。
これは「緊急措置」が必要です。
「緊急措置」という言い方をしているのは、残りの維持年数とのバランスで見出した工法ということです。今回の補強でいきなり何十年も持たせることは期待できません。あくまで「あと数年を維持する延命措置」です。
廊下床抜けを回避する緊急措置イメージ
稚拙なスケッチでわかりづらいですが、今回の工事イメージ図です。まず、抜けそうな床を支えている「鉄骨フレーム」に対して「補強フレーム」を増設することで鉄骨強度の底上げをしていきます。
この「補強フレーム」は床を支える役割をするために、既存の構造鉄骨にも溶接で接合します。腐食補強のポイントは「腐食した場所を補強するために(比較的)腐食していない場所の強度を流用して強度の底上げをする」というところです。
緊急措置の施工風景
イメージ図で解説した「補強フレーム」の施工風景です。腐食した鉄骨フレームを脇から支えるように溶接して接続します。(写真をわかりやすくするために工事の経緯を入れ替えています)
補強フレームが「腐食した鉄骨フレーム」と「まわりの既存鉄骨を」の架け橋になるように溶接施工をしています。ピンポイトで補強するのではなく、フレーム全体の強度を底上げするようなイメージです。
「床抜け」が発生していた箇所を集中的に緊急措置するために、穴あき部分を中心に「床鋼板」を増設しました。
この床鋼板、ただ鋼板を敷くのではありません。床部の不陸(平らではない状況)を吸収すべく、床鋼板の下に金物を潜ませて作ってあります。これで安定した歩行を確保できますよ。
床面の不陸がある程度支障のない場合は、床抜け欠損部に鋼板(チェッカープレート)を敷いて施工します。廊下にだいぶ安定感が戻ってきました。※ほかにも補修の手をいろいろ加えていますが、今回の記事では「床抜けを回避する」ことをシンプルにお伝えするために割愛します。
最後に、鉄部全体をケレン(鉄表面のサビを削り取る)して防錆塗膜を付けます。上塗り塗装を前提にした塗膜です。
誤解を生んでいることが多いのですが、防錆塗装(サビ止め塗装)は「この塗装だけでサビを止める!」のではないです。あくまで鉄部の塗膜保護の下地となる塗料なのです。
これが最後の補修措置かもしれません
建物の残存年数によりますが、今回のケース(残り数年)では「これが最後の補修措置」になるはずです。
施工店としてオーナー様にお伝えしたいことは「なんでも交換、なんでも新調することは解決にならない」ということです。有限のご資産を守るべく、また、建物の資金運用を考えながら、最短距離の補修措置をご検討ください。弊社はきっとお役にたちます。
参考:廊下や踊り場の床が補強不能でも苦肉の策の工事例