この記事でわかること:
階段や廊下、ベランダの鉄骨錆びに悩んでいるが、あと10年くらいもてば十分。安く、賢く補修で不安解消する方法を把握していただけます

築40年前後の木造アパートにある鉄製の外部階段や廊下、ベランダは、経年劣化を避けられず、それなりの腐食(錆び)があるはずです。
そして、賃貸物件として安全管理をすることはオーナー様の義務であり、行政からも指導がされています。
参考:既存不適格建築物に係る是正命令制度ガイドライン:国土交通省
とはいえ、アパートも長くは運用しないし、あと10年くらいもてばOKというオーナー様には、安く賢く、延命補修で乗り切る工事ができます。
目次
鉄骨補強は「あと何年使うか」で予算が決まる

アパート(建物)の外部鉄骨錆び補修において、最も重要なのは「あと何年使うか」を決めることです。期限を決めることで、工事範囲を絞っていけるからです。
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あと数年の場合:
最低限の応急処置で、安全を確保する暫定的な対応。塗装すらしない可能性も。 -
あと10年前後の場合:
「10年後に建物を取り壊す、建て替える」という計画に合わせ、高額な交換工事を避けつつ、人的被害リスク解決に焦点を絞って「戦略的延命」を行います。
- あと30年以上の場合:
経年劣化の先行きの見通しが立たず、補修だけでは解決できない可能性が高いです。
施工例:鉄板床を交換しないで補強

例えば、鉄骨廊下の床鉄板が錆びて、デコボコになったり、小さな錆穴が空いているとします。
本来の補修工事では、床鉄板の補修工事が必要ですが、運用年数やダメージによっては、問題の床鉄板をそのまま使う補修方法もあります。
ご紹介する工事は、床鉄板をそのままに、鉄板の下に補強鋼材を溶接することで床鉄板の転落を防ぐ工法です。

床鉄板の下地増設工事です。
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工法:
既存の横方向の骨組みに加え、縦方向に新しい鋼材(アングルなど)をクロスして「背骨」を作って床鋼板を支える -
メリット:
床鉄板への荷重を分散させる。床を交換しないので工事費用が安い。居住者様の生活不便がほぼ無い -
デメリット:
補強効果が限定的。床を支える既存下地フレームの腐食には対処できない。何十年という長期利用には不向き

将来起こり得る「床鉄板がボロボロで交換しないと・・・」という問題(出費)を予防します。床鉄板の交換は、居住者様のいるアパートでは、できれば避けたい工法ですので。
施工例:「塗装前のテープ隠し」も鋼板溶接で解消

例えば、ベランダ鉄骨の穴をテープを貼って、腐食が隠されている場合がああります。

テープを剥がすと、錆び穴がそのまま放置されて隠れていた状況がわかります。
オーナー様がこの状態を知らないことも多いので、注意が必要だったりします。
このままでは強度は戻りません。

本来は、腐食した鉄骨の交換が推奨されますが、腐食ダメージや運用年数によっては、外から新しい鉄板を溶接することで強度を取り戻すこともできます。

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工法:
穴の開いた重要な構造部分(胴差鉄骨)に対し、上から厚みのある鋼板を被せて一体化(溶接)させます -
メリット:
鉄骨そのものを交換せず、ピンポイントで強度を復活させます。工事範囲を絞ることで工事費用を節約できます - デメリット:
長期の継続利用には向かない。既存鉄骨にギブスや松葉づえを増設している工事なので、補強効果は限定的です
今回の補強カバー鋼板と、鉄柱、鉄板床の鉄骨を一体化させるために「筋交い補強鉄骨」を増設します。ちょうど赤茶色の骨材が今回の補強で使用した鉄骨です。
廊下全体が相互に強度を補完し合う状態となり、鉄骨設備は大幅に延命されます。
施工例:鉄骨腐食の原因、「浸水」は天敵

例えば、廊下がモルタル製で、30年以上メンテナンスをしていない場合、モルタル床と鉄骨の隙間が空いています(緑のライン)。ここに浸水されると、深刻な鉄骨腐食が生じます。

こちらもダメージ次第(運用年数次第)ですが、暫定的にでもシール(コーキング)を打ち直すことをお勧めします。
とはいえ、10年以上の運用をお考えでしたら、長尺シートによる耐水補修をしたほうが無難で、人的被害リスク予防になります。
まとめ:無駄な高額工事をしないために

繰り返しになりますが、補修工事は、どこかで「線引き」をしないと工事費用が際限なく必要になってしまいます。
例えば「10年もてばいい」というご希望に対して、過剰な工事(リニューアル)はもったいないですよね。
溶接や塗装、耐水作業などの補修行為を「最後の10年」というテーマで現実的に考えていくことが大切だと弊社は考えます。
要約Q&A
Q:アパートの鉄骨が錆びていますが、全交換しないとダメ?
A:ダメということではありません。「あと何年使うか」の計画次第で、全交換を避け、部分補修での延命が可能です。 築40年前後のアパートで、あと10年程度の運用をご希望であれば、高額な全交換ではなく、腐食箇所に新しい鋼材を溶接して補強する「戦略的延命」を推奨しています
Q:廊下の鉄板に穴や凹みがあります。安く直す方法はありますか?
A:床鉄板を交換せず、下の骨組みを増設する「下地補強」をする工法があります。工費を大幅に安くすることができますが、対処療法の要素が強いため、効果は限定的です。すべての症状において最適な工事ではありません。現地でのお打合せが必要です
Q:ベランダの廊下の鉄骨の穴をテープで隠しているのですが、強度は戻りますか?
A:テープでは強度は戻りませんが、厚い鋼板の「カバー工法(溶接)」で強度は復活します。 錆びた部分を切り取る大掛かりな工事をせず、上から鋼板を被せて溶接(ギブスのような役割)することで、ピンポイントで強度を回復させます。コストパフォーマンスに優れた補修工事です
Q:全体交換工事と比べて、どれくらい安くなる?
A:状況次第ですが、おおよその目安として、全体交換工事の20%~50%程度の費用になることが多いです。
Q:10年持たせるために、最低限やっておくべきことは?
A:強度を失った鉄骨の強度を底上げすること。鉄骨腐食の原因である「浸水」を合わせて考えること。これが最低限の延命ポイントといえます。延命という目的に不要な要素をそぎ落として、工事を整理することが、地に足の着いた現実的な節約術だと考えます
