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鉄骨ベランダの延命補修と相場費用について

この記事で解決できること:
「錆びたベランダを交換せずに延命補修できるのか?」、「費用はどのくらいかかるのか?」
という疑問に答えるかたちで、実際の補修内容と費用の目安をわかりやすく解説します。

鋼製ベランダ延命修理

ついつい先送りにしてしまう鉄骨ベランダのサビ腐食問題。理由は「工事のタイミングがわからない」「どこに補修を依頼していいのかわからない」「どれだけの工事費用なのか把握できない」というところではないでしょうか?

しかし、鉄骨腐食は時間と共に進んでいき、工事条件もどんどん悪くなって、居住者様の人的被害リスクは高くなっていきます。消費者庁もオーナーへの注意喚起を行っています。

参考:消費者庁「賃貸住宅の建物及び付帯設備に不具合はありませんか?」(平成28年3月)

上記資料から抜粋:
「アパートは築 20 年以上で、2階に住んでおり外階段を利用。外階段の腐
食が激しく、上り下りの際に踏み板がガタガタしていたのが気になっていた。
3日前、2階から1階へ下る時に、突然踏み板が外れ、階段から落下し、右
足にけがをした。
(事故発生年月:平成 27 年8月 被害者:秋田県 治療1~2週間)

結論から申し上げます。既存部材を継続して使えるように、延命補修ができれば、コストも居住者様の負担も最低限で済みます。専門の鉄工所が、オーナー様にお役に立てる情報を解説します。

鉄骨ベランダ(4Mx1M程度)、補修の基本構造と費用感

鋼製ベランダ延命修理

補修内容 目安費用(税別) 備考
裏面デッキプレート補強 10〜25万円/1スパン カバー鉄板溶接・梁増設など
手すり腐食部の交換 1〜10万円/箇所 根元のみ交換も可能
鉄骨の塗装 10〜15万円/1箇所 幅4M・奥行き1M程度
耐水長尺シート施工 8〜13万円/1箇所 モルタル下地調整+タキストロン施工
総括(梁+床+手すり) 30〜65万円前後 築30年以上のアパートに多いケース

※幅4M・奥行き1M程度のサイズでの計算です
※状況に応じて足場工事、基礎工事、胴差構造補強工事が必要になります(別途費用)
※上記費用は参考価格です。放置期間、維持年数によって工事可否・費用も変動します

ケース1:ベランダ裏側のベコベコ劣化問題

鋼製ベランの裏側のサビ

鋼製ベランダの腐食トラブルで一番多いです。ベランダの裏側にある「波のような形をした鋼材(デッキプレート)」がサビてベコベコになり、ひどい場合は、中からモルタルが見えてしまっていることも。

ただし、デッキプレート全体が老朽化していなければ補強可能。サビ腐食は部分的に集中していることが多く、老朽化の進んだ部分を修理すれば延命使用できます。

ベランダ裏側の延命補修の方法

  • 腐食している部分の下に鉄骨梁を新設/増設して、デッキプレートを下から支える

  • 欠落部を覆うようにカバー鋼板を溶接(耐水措置が前提)

  • 固定部の穴にはシール材を注入し、防水処理

これにより、全面交換せずに強度を復旧できます。以下に鉄骨補修工事の例をご紹介します。

ベランダ補強の鉄骨梁

ベランダの両側に鉄骨梁を増設して、デッキプレートの欠落を押さえます。この鉄骨梁はベランダの端から端まで通して溶接することで、ベランダ全体を支える効果になります。
※補修方法は状況に応じて変化します。すべてのベランダに適用される工法ではないです

鉄骨固定の穴にシール

鉄骨梁を支持する金具を建物に設置する際に、穴にあらかじめシール材を注入します。これで建物側に水が入らないようにします。

デッキ補強鋼板

老朽化している部分に「デッキ補強鋼板」を溶接します。

ベランダ補強成功

これで鋼製ベランダの裏側(デッキプレート)は無事に延命補強されました。工費参考費用として、10万円~25万円税別ほどです(補強量によります)。

ケース2:手すりの錆びによる、安全性不安の問題

ベランダの手すりがボロボロ

ベランダの手すり根元がサビて穴が開くケース。この写真、ゾクっとしませんか・・。

この手すりに布団を干したり、よりかかったりしていたのです。すでに、人的被害リスクの要件を満たしています。見た目はまだ使えそうでも、少しケレン(表面の劣化塗膜などを削る作業)すると、このように、ぽっかり穴が開いていることがあります。

延命補修の方法

  • 腐食部分だけをカットして撤去

  • 新しい鉄骨材を部分溶接で接続(既存と一体化)

鉄骨製ならアルミ製よりも修理自由度が高く、ピンポイント補修が可能です。以下に鉄骨補修工事の例をご紹介します。

サビてボロボロな部分だけ撤去

サビてボロボロな部分だけを撤去します。患部を摘出する外科手術のイメージ。

強度が残っている部分は修理の手を加えません。腐食して強度に問題がある部分だけを撤去して交換します。

ベランダ手すりがボロボロ

手すりフレームの下側だけがサビでボロボロになっています。手すり下から覗き込むと、大きなサビ穴が空いています。鉄骨寿命に黄色信号が灯っています。

手すり交換補修

ボロボロな部分だけを新しい鉄骨に交換します。赤い鉄骨が新しくした部分です。アルミの既製品ではこうはいきません。部分的に修理して長く使えるのが鉄骨設備のメリットです。工費参考費用として、1万円~10万円税別ほどです(1箇所だけで1万円で終わるという意味ではなありません。補強量によります)。

ケース3:床からの浸水で裏側が錆びる問題

鋼製ベランダの床モルタル

防水膜が劣化して、モルタル層に雨水がしみ込み、裏面の鉄板を腐食させるパターンです。この状況を放置することで、ベランダ裏側の鉄骨がベコベコになります。

延命補修の方法

  1. 劣化防水をできるだけ撤去し、モルタルで下地調整

  2. 長尺シート(タキストロン)を施工

    • 厚さ2.5mmの複層構造で防滑性・耐水性が高い

    • 施工翌日から使用可能

ベランダにタキスロトン工事

下地調整のあと、タキストロン(長尺シート)を施工します。タキストロンは厚さ2.5mmの複層シート構造なので、床モルタルへの浸水を物理的にブロックします。

タキストロンは、防滑性も優れており、雨が降っても滑りにくい優れもの。さらに、工事時間も従来の塗布防水に比べると大幅に短縮されるので、施工した次の日からベランダを使うことができます。

ベランダ床への浸水をシャットアウト

長尺シートの施工が完了しました。工費参考費用として、8万円~13万円税別ほどです(補強量によります)。

ちなみに、築年数のあるベランダに長尺シートを施工すると、雨天後に水たまりができることがあります。理由は、モルタルに浸水していた水が、逃げ道を失ったからです。水たまりそのものは厄介かもしれませんが、鉄骨の寿命延長という観点からすれば、耐水効果が得られたということになります。

参考:長尺シート(タキストロン)の水たまりを解説

この記事を読んでいただきたい方: 補修...

まとめ:延命補修が選ばれる理由

錆びたベランダの修理工事

錆びたベランダでも延命修理が可能なことが多く、運営費用や居住者様へのケアでもメリットがあります。

  • 交換よりコスパが高い(新品交換の1/3〜1/2程度)

  • 工期中(7日前後)、ベランダが残っているので居住者様への影響が少ない

  • 建物の寿命や予算に合わせた施工レベルを調整可能

錆びた鉄骨でも、適切な補修で10年以上延命できるケースは多くあります。

専門鉄工所の私どもをお役立てください。

参考:ベランダのギシギシする?その原因と対応策は?

要約Q&A

Q:錆びた鉄骨ベランダの補修にはどのくらい費用がかかりますか?
A:腐食の進行度やベランダの構造によって異なりますが、部分補修なら20万円前後〜鉄骨補強を含む延命修理では30〜65万円税別程度が一般的(幅4M奥行き1M程度として)です。全面交換よりも、腐食部をピンポイントで直す「延命補修」のほうが費用を抑えられます

Q:ベランダのサビを放置するとどうなりますか?
A:鉄骨の強度が落ち、床が抜ける・手すりが折れるといった事故につながる危険があります。実際に、消費者庁の資料でも「腐食した外階段から転落する事故」が報告されています。
早めの補修が、費用の抑制にも安全確保にもつながります

Q:ベランダ全体を交換するより、延命補修のほうがいいのはなぜですか?
A:鉄骨ベランダは「部分ごとに修理できる」構造だからです。劣化している鉄板や手すりだけを交換・補強すれば、新品交換の半分以下の費用で延命が可能です。専門鉄工所の視点で、劣化箇所をピンポイントに補修することができます

Q:工事中、入居者はベランダを使えますか?
A:溶接などを伴う工事中は一時的に立ち入り制限がありますが、長尺シート(タキストロン)仕上げの場合は施工翌日から利用可能です