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【危険】鉄骨に貼られたアルミテープ、オーナー様は把握していますか?

この記事を読んでいただきたい方:
所有するアパートや建物の外階段・廊下・ベランダに、テープのようなものが貼られているオーナー様、メンテナンスはしているけど塗装だけであったオーナー様、外観維持ではなく、安全性を優先したいオーナー様に向けた記事です。

鉄骨の錆び穴(1)

外部の鉄骨設備に「テープ」が貼られていることがあります。塗装に隠れてしまうので、よく見ないとわかりません。これは「アルミテープ」といって、上から仕上げ塗装ができるアイテムです。

ただ、鉄工所からすると「そこをアルミテープ補修でいいの・・?」と思うことがあります。

誤解無きよう書きます。アルミテープが悪い!というのではありません。弊社も補修工事でアルミテープを使っています。そうではなくて、「アルミテープ補修の位置によっては、安全面に問題がありませんか?そもそも、オーナー様はアルミテープ補修のことを、業者から報告を受けていますか?」といいたいのです。

アルミテープ補修のメリットとデメリット

参考:屋外補修用アルミテープ:Amazon

アルミテープの特徴として、「テープの上から仕上げ塗装ができる」という点が挙げられます。本来は鉄部補修工事の対象だけど、工事費用の都合でテープ補修(塗装)というケースで使われることが多いです。

しかしながら、鉄工所の目線として心配なのは下記の点です。

  • そのアルミテープ補修は、業者からオーナー様に報告があったのか
  • 人的被害リスクの高い位置を、テープ補修で済ませていないか

経験上、「そこにテープが貼られているなんて知らなかった」というオーナー様が少なくありません。まず、テープ補修を知らせていないことが問題ですし、人的被害に関わる場所のテープ補修は危険です。

人的被害に影響しない箇所の腐食錆びであれば、コスト節約の選択肢として有効ですし、弊社もアルミテープやパテを使って溶接補修を除外して工事費用を抑えることがあります。以下部端的に解説します。

アルミテープ補修のメリット

  • 鉄部補修をしないのでコストが安い
  • 鉄工所を工事に呼ばなくて済む
  • 短納期で工事が進む

アルミテープ補修のデメリット

  • 人的被害リスクのある位置の腐食にテープ補修は適切ではない
  • 工事結果がオーナー様にわかりづらい(きちんと説明していれば問題なし)
  • 建物管理者が交代すると、テープ補修情報が埋もれてしまう恐れ

と、このようにアルミテープは「諸刃の剣」であり、使うときには安全面での理解、情報の共有が必要だと考えています。

アルミテープ補修が向いている箇所、向いていない箇所

先ほども解説しましたが、結論として「アルミテープ補修が向いている箇所」は、手すりの格子など、「そこが欠損しても事故が起きにくい」場所です。「アルミテープ補修が向いていない箇所」は、ベランダの柱や階段の構造部など、「そこが欠損すると事故が起きる」場所です。

鉄骨にテープが貼られている(1)

上記は、鉄骨共用通路の構造部(胴差)なのですが、ここにアルミテープが貼られていました。オーナー様に「ココがテープになっているのを知っていましたか?」とお聞きすると「知らない」と・・。

鉄骨の錆び穴(2)

アルミテープを剥がすと、鉄骨に巨大な錆び穴が空いています。人的被害リスクの要件を満たすダメージです。放置すれば通路の床が抜ける可能性があります。

参考:アパート外階段が抜け落ち家族5人が転落 原因は?:HTB北海道ニュース

また、テープ補修した当初は小さな穴でも、数年後には大きな穴になっていることもあります。塗替え工事やメンテナンス工事のときは、必ずテープを剥がして確認してください。

テープ補修の限界には「鉄骨カバー補強」

鉄骨のカバー補強(1) 鉄骨のカバー補強(2)

錆び穴補強の定番である「鉄骨カバー補強」とは、もともとの鉄骨を残して、腐食個所にピンポイントに新しい鋼板を被せて溶接する補強作業です。溶接を伴う工事なので費用はそれなりにかかりますが、設備の安全性を確保できます。鉄骨カバー補強工事を端的に解説します。

鉄骨カバー補強工事のメリット

  • 鉄骨の強度を復旧して人的被害リスクを抑える
  • 範囲を設けて補強するので交換工事より費用がかからない

鉄骨カバー補強のデメリット

  • テープ補修と比べて高額
  • 「補強しました感」がはっきりわかる(絆創膏のようなエンボスが鉄骨表面にできる)

鉄骨の補強カバー工事

【注意】
カバー補強は、緊急性の高い補修で有効な工法ですが、鉄骨全体の腐食が激しい場合や、維持年数から逆算した費用対効果の問題など、全てのケースに対応できる万能な方法ではありません。

いかがでしたでしょうか。今回は、アルミテープ補修に潜む危険性について解説いたしました。下記の3ポイントを把握しているだけでもオーナー様の知見に大きく役立つことを保証します。

  • アルミテープ補修は、「オーナー様への報告」「安全な場所への使用」が前提
  • 構造部分(床、柱、梁など)への使用はNG
  • 定期メンテナンス時はテープを剥がして下地を確認すること

鉄骨設備のメンテナンスにご不安のあるオーナー様、ぜひ弊社までご連絡ください。

要約Q&A

Q:アルミテープ補修はどんなときに役立つの?
A:構造部に発生したものではなく、かつ、軽微な腐食であればコスト節約と美観維持に役立つアイテムです。弊社も使います

Q:アルミテープ補修はどんなときに注意が必要?
A:構造部に発生した腐食への対処としては注意が必要です。その後の腐食状況が隠れてしまい、深刻な腐食に成長したことに気付けないからです

Q:アルミテープはどこで手に入る?DIYでも使える?
A:扱いは簡単なのでDIYでも使えます。ホームセンターに行けば売っていますし、オンライン通販でも売っています

Q:鉄骨カバー補強の費用は?
A:一箇所の単価では出しにくく、工事全体のボリューム次第で数千円~数万円程度で対応できることが多いです。一箇所だけであれば半日程度で済みますし、設備の使用制限もほぼありません

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