この記事をシェアする

鉄骨階段の寿命を10年延ばす「鉄板増し張り溶接」

この記事を読んでいただきたい方:
鉄骨錆び腐食の対策をする必要があるが、既存階段を活かして、低コストで安全に補修する方法はないかと模索するアパート建物オーナー様、鉄板増し張り溶接がどんな工事で、どのような効果を得るかを知りたいオーナー様向けの記事です。

「階段を作り直すしかないの?」と諦めかけていたその鉄骨階段、「鉄板増し張り溶接」という工法なら、あと10年、寿命を延ばせる可能性があります。

この記事では、鉄骨階段の再生に特化している鉄工所の視点から、鉄板増し張り溶接工事による延命補修工事の具体的な手順と、その効果を工事実例をもって分かりやすく解説します。

「鉄板増し張り溶接」とは? 仕組みとメリット

外階段の増し張り補強

「鉄板増し張り溶接」とは、ひと言で言えば、「階段の床(ステップや踊り場の鉄板)に、そのまま新しい鉄板を被せて溶接して一体化させる」補強方法です。階段の構造自体は活かしつつ、人が踏む「段板」や「踊り場」の床面の安全性を物理的に回復させます。

鉄板を交換する工事と比べて、短納期、コスト安で実現できるのがメリットです。その代わり、延命効果は比較的短いという妥協点を含みます。15年以上の維持年数を予定している階段では慎重な判断が必要です。

虫歯治療で例えるなら、インプラント(交換)ではなく、悪い部分を削ってから「銀歯」を被せるイメージに近いかもしれません。

鉄板増し張り溶接の工事実例

階段補強前1

工事前。階段の床面などに錆び穴が開いています。

階段補強前2

踊り場にもサビ穴が空いています。

鉄部3種ケレン

3種ケレン作業(鉄表面の錆び、劣化塗膜を削り落とす作業)や、錆び穴を中心に強度確認を行い、隠れた脆弱部も洗い出します。

増し張り溶接工事で重要なのは、新しい鉄板を被せる前の「下準備」です。工事が終われば見えなくなってしまう部分も含めて丁寧なケアを怠らないことで、補強後の寿命が大きく変わります。※ココを適当に行う業者がいることは残念です。

補強材の工場加工

補強に必要な鉄板の寸法を計測したら、工場で補強材となるステップ鉄板や踊り場床鉄板を準備します。

段板の補強溶接

増し張り工事の前に、先行して既存の段板への補強溶接をしておきます。工事後には隠れてしまう分部も強度の底上げしておくことで、補強効果に差が出ます。

新しい鉄板をただ乗せるだけでは、十分な強度は得られません。溶接の土台となる既存の段板の弱っている部分にもあらかじめ補強を加え、下地そのものの強度を底上げしておきます。このひと手間で、新しい鉄板との一体感が格段に高まり、長期的な耐久性が確保されます。

鉄部の防錆塗装

鉄板を増し張りするエリアにあらかじめ錆止め塗装をします。

外階段の補強溶接

階段の上に、新たな鉄板を乗せて溶接します。増し張り溶接と呼ばれるのがココの作業です。

外階段の増し張り補強後1

鉄部塗装をして、補強効果を維持(酸化を抑止する)します。

参考:日本ペイントのファインウレタンU100を使用しています

これで、鉄板溶接増し張り工事は完了です。派手な交換工事に比べて、コストを大幅に抑えて、工期も短縮できるメリッがあります。

多少の錆びなら、鉄骨階段はまだまだ使える

外階段の増し張り補強後2

腐食が進んだ鉄骨階段を延命させる「鉄板増し張り溶接」について解説しました。おおよそ下記が3大ポイントです。

  • ポイント(1): 増し張り溶接は、既存の階段を活かして「低コスト・短工期」で安全性を回復できる有効な手段です
  • ポイント(2): ケレン・下地補強といった「見えなくなる部分の下準備」を怠ると、ただの安かろう悪かろうの工事になります
  • ポイント(3): 維持年数が15年以上となると向かないが、10年の延命を目指す補修手段として有効です

建物の資産価値と入居者の安全を守るためにも、場当たり的な修理ではなく、長期的な視点での計画的な補修が不可欠です。外階段の腐食でお悩みのオーナー様、お気軽にご相談ください。

要約Q&A

Q:鉄板増し張り溶接とは?
A:階段の床(ステップや踊り場の鉄板)に、そのまま新しい鉄板を被せて溶接して一体化させる補修工法のひとつです

Q:鉄板増し張り溶接が向いているのは?
A:あと10年の延命目安、短納期、工事費用節約、使用制限期間無しを目指す場合に有効です

Q:鉄板増し張り溶接が向かないのは?
A:あと15年以上の延命目安の場合は、基本的にオススメいたしません

この記事をシェアする

横山鉄工所(鉄創庵)をフォローする