外壁モルタル落下の現状(鉄骨サビ度:★★☆☆☆)
オーナー様から「廊下の壁が一部、落っこちた!」とご連絡がありました。至急駆けつけて確認したところ、廊下の外壁モルタルが部分的に落下していました。廊下の内側の鉄骨がむき出しになっており、合わせて解決しなくてはなりません。
外壁モルタル落下の解決策(補強方法):
今回の外壁モルタル落下は、廊下の下地となっている鉄骨と、ここに施工された外壁モルタルの剥離です。「落下したか部分を下からカバーする」だけでは安かろう悪かろうな工事です。事態の大元は「廊下の不具合」からの始まっています。廊下への耐水工事、樋工事、鋼板補強で解決します。
この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食ダメージの具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用も現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。
目次
外壁モルタルが部分的に落下してしまった
オーナー様から「廊下の外壁が落っこちた」とメールがあって、すぐに現場調査を行いました。鉄鋼階段が接続された廊下の外壁(底面)が、部分的になくなっているのがわかりますね。
足元で、落下したモルタルが地面に粉々になっていました。これが入居者様の頭上にでも落下したら大事故です。
剥がれたモルタル外壁の内側には、廊下の骨組みとなっている鉄骨が見えています。
この問題の原因は「廊下の不具合」にありす。不具合を解決するための補修工事をすることで、下記のような写真となりました。
パネル鋼板補強、樋工事、耐水シートで解決した結果
経緯は下記で解説していきます。
今回の補強工事で行った内容は大きく分けて下記の3種です。
(1)廊下を流れる雨水を制御するために樋の新設。
(2)廊下の床面に耐水シートを施工して、廊下床から骨組み鉄骨への浸水をブロック。
(3)補強鋼板(ホンデ鋼板)を使ったカバー補強工事。(なぜパネル工法にしているのかは後述します)
(1)~(3)を行うことで、今回の外壁モルタル落下の抑制と、その原因を断つことができます。(1)~(3)の施工内容は、互いの補修効果を補填しあっている関係です。
では、具体的な工事内容を時系列で解説していきます。
モルタル落下の再発を防ぐため、暫定の応急補強
現場がアパートなので、入居者様の安全確保が何よりも優先。本格的な補強工事を始めるまでの間、応急補強をします。
鉄骨材を使って、モルタルが落下した部分を強制的に抑え込みます。赤い鉄骨が応急補強を行った場所です。これで外壁は一時的に守られている状態。入居者様への人的被害を回避しました。
ここから補強工事の本番です。
なぜ外壁モルタルが落下したの?(イメージ図)
上記は廊下断面のイメージです。
なぜ「外壁モルタルが落下」したのか?それは「鉄骨下地が腐食したから」です。では、なぜ「鉄骨下地が腐食」したのか?それは「廊下の床からの浸水」があったからです。
ひとつの現象に対する因果関係を見つけることが大切です。これを検討しないで、場当たり的に外壁モルタルを抑え込むだけでは安かろう悪かろうの工事になります。
工事を費用だけで判断することは危険です。無駄な出費になってしまわないようにご注意ください。
廊下の床をよく観察する
廊下の現状写真です。
床面の防水膜が老朽化して効果が薄くなっています。さらに、モルタル自身にもひび(クラック)が発生しています。床面と立ち上がりのすき間にも浸水が始まっています。
廊下では、降ってきた雨を停滞させないために「水勾配(みずこうばい)」が設定されますが・・・。
なぜかこの廊下では、水の流れの「上流」にドレン(排水溝)があります・・。
結果的に、既存のドレンには水が流れることはなく、ドレンがない鉄骨階段側に水が流れて、ほとんどの雨水が階段との接続部で浸水しています。
この浸水ポイントのすぐ下が「外壁モルタルが落下したところ」です。
鉄骨補強工事の内訳(樋!耐水!鋼板補強!の3セット)
極力わかりやすく解説するならば、今回の補修補強工事の内訳は上記の3種類です。順番に解説していきます。(実際にはもっと細かく補修していますよ)
補修作戦その1「樋の新設」
「樋の新設」は、ドレンとは逆方向に流れる雨水を適切に排水することが目的。
水勾配の下流であり、鉄骨階段の手前辺り、適切な場所を選んで床に穴をあけます。この穴あけによる強度ダウンを鉄骨補強で補填します。
先ほどあけた穴に、直径60mmの樋を通します。これで階段方向で水たまりになっていた雨水を、廊下の外へ排水できます。
補修作戦その2「浸水対策」
樋を作ったところで、床面モルタルのヒビなどから浸水している状況が変わりません。
そこで、廊下の床面への浸水対策を行います。
廊下床と、立ち上がり部分の隙間にもやや不安があるため、立ち上がり部の防水も行いました。こちらはウレタン防水です。
廊下立ち上がりは「ウレタン防水」。床面は「タキストロン」を施工します。
これで廊下床面からの浸水はブロックされ、骨組みとなっている鉄骨へのダメージを大幅に軽減できます。
補修作戦その3「鋼板補強」
「樋」と「浸水対策」をしたことで、廊下の骨組み鉄骨は雨水から守られました。最後に、モルタルが落下した外壁部分を鋼板補強していきます。
鋼板は、耐候性の高い「ボンデ鋼板」を使用しています。劣化したモルタル外壁を覆うように巻き付けていきます。
鋼板補強の範囲は、今回のモルタル落下の周囲のみです。また、鋼板はパネル工法で施工してあります。
パネル工法とは、鋼板をパネル形状にすることで、モジュール化して現地で組み立てることができる方法です。パネル工法を選んだ理由は、今後、外壁モルタルの落下範囲が広がった場合に、パネルの組合せを延長して、計画的に補強できるからです。
これで、将来的にも無駄なく補強工事ができます。
このようにして、ボンデ鋼板によるパネル工法を使った補強が完了。新設された樋との位置関係も写真の通りに連携させています。この廊下の床に浸水対策のタキストロンが施工されているわけです。
三位一体の補修補強で、かつ、将来の補修にも無駄がないように計画してあります。
いかがでしたでしょうか。
目の前の状況を見たままに補強しても、工費に無駄が出る場合があります。問題の因果関係を理解して、効果的な補強工事を行うために、私たちをお役立てください。