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鉄階段の延命手段、溶接・塗装・耐水を整理して無駄な費用を抑えましょう

この記事でわかること:
鉄骨階段の延命補修には、主に「溶接補強」「塗装」「耐水(防水)」の3つの工程があります。 それぞれの役割・必要性・コスト上の意味を整理して、 「残りの使用年数」を軸にどこで線引きするのが合理的かがわかります

アパートの老朽化した鉄階段

工事費用と安全確保のバランスを整理する

腐食した鉄骨階段のご相談をいただいたとき、工事内容より先に、
オーナー様に必ず質問とご提案をすることがあります。

この鉄骨階段を、あと何年使いますか?

補修工事は、設備が古いほど補修箇所は増えます。
「やろうと思えばいくらでもできる」ものです。でも、大切なのは、
残り使用年数と投資対効果を見極め、合理的に費用と安全性の線引きをすることです。

鉄階段の補修とタキステップ

例えば、数年後に建物を解体する予定なら、溶接補強だけで終わらせることもできるかもしれません。塗装も耐水手段も、費用対効果が合わないかもしれません。 一方、10年以上の維持を考えているなら、溶接補強だけでは「サビの侵攻を一時しのいだ」に過ぎず、 数年後に同じ工事が繰り返されることになります。

使用年数を先に決めることが、無駄のない補修計画の出発点です。

以下より、鉄骨階段の延命手段である

  • 溶接補強
  • 塗装
  • 耐水

を工程ごとに分割して、その役割、コスト上での意味を整理します。
工事範囲の見極め方の参考になりますと幸いです

溶接補強工程 ~使える状態に戻す~

鉄階段の段板が凹んで変形する

鉄骨階段の段板(踏み板)がサビで腐食し、体重をかけるたびに沈み込むような状態になることがあります。 これは、段板が経年サビで強度を失い、荷重に耐えられなくなっている状態です。放置すると段板を踏み外すリスクに繋がります。

溶接補強は、この状態を「使用可能な強度」に回復させるための工程です。実際にこの工事で行った具体例をご紹介します。

階段段板の溶接補強パーツ

段板を矯正したあと、この姿勢を維持するための補強パーツを作っておきます。
写真は、工場で用意したL型の補強パーツです。

ジャッキアップして段板補修する

ジャッキ工具を使って、凹んだ段板を水平状態に矯正します。

補強パーツを使って鉄骨階段を補修する

水平に矯正された段板に対して、補強パーツを溶接します。
これで、段板は矯正された状態で固定されます。
既存の段板を取り壊すことなく、補強工事で再利用できるようにしました。

溶接を使った鉄階段補強

すでに凹んでしまった段板を含めて、将来的に凹むこと踏まえて、溶接補強工程が終わりました。


✔ 数年の維持であれば、ここで工事を終わらせることもあります。
最低限の防錆タッチアップ塗装は必要ですが、塗装や防水シートは不要かもしれません。
解体予定の設備に過剰投資するのは「無駄」と割り切ることも選択肢です。

✔ 既存設備を流用することで、階段全体を交換と比較してコストは20%前後にに絞られることが多いです。ただし、溶接だけではサビの進行を止められず、腐食の「原因」は残ったままです。

塗装工程 ~使える状態を維持する~

鉄階段のウレタン塗装

塗装の目的を「見た目の刷新」と捉えると、優先度が下がりがちです。 しかし鉄工所の視点で言えば、塗装は「鉄骨補強工事の効果を維持する」ための工程です。一般的な塗装と鉄骨塗装は、やり方が違います。

また、強めのケレン作業(鉄部表面の下地確認と補正)を行うので、上からただ錆止めを塗るというDIY的な手段とは異なり、延命特化の目的を怠りません。

ファインウレタンU100

溶接補強で回復した強度も、鉄骨が外気や湿気に直接さらされたままでは、数か月で強度に悪影響を及ぼします。 エポキシ系の防錆処理とウレタン系塗料でコーティングすることで、鉄骨を塗膜で守って補強効果を持続させます。


✔ 鉄骨設備の塗装周期はおよそ7年前後です。この周期で定期的に塗られている鉄骨階段は、溶接補強を省略して延命できるケースもあります。

✔ 溶接補強に費用をかけたあと塗装を省くのは、 補強の効果が短命になります。維持10年以上の中長期維持が前提なら、溶接補強と塗装はセットで計画してください。

✔ 既存設備(階段)を使うということは、鉄骨内部に浸透したサビは除去できず、塗装後に錆び汚れがでることもあります。また、既存塗膜の品質も影響を受けます。

耐水工程 ~サビの原因を抑止する~

鉄階段と3Wタキステップ

鉄骨がサビる最大の原因は雨水です。 どれだけ丁寧に溶接・塗装をしても、段板の上に雨水が溜まり続ければ、 塗装膜が劣化した瞬間から腐食が再開されます。

耐水工程では、長尺シート(タキステップ等)を段板に施工し、床面への雨水侵入を物理的に遮断します。

これはサビの「症状を抑える」のではなく、サビの「原因」を取り除く工程です。

梱包されたタキステップ

タキステップは工場で下準備をした状態で現地に搬送します。これは荷姿です。

タキステップのような長尺シート製品による耐水は、「ウレタン防水」などの塗膜防水と比較されることがあります、それぞれの機能や費用相場は下記のページが参考になります。

屋上や狭いバルコニーなど、限定的な施工条件でない限りは、アパートの鉄骨設備の維持アイテムとしてタキステップやタキストロンのような長尺シートをお勧めします。


✔ タキステップ等の長尺シートは、耐久10年以上、施工期間が短く、今後の維持費用も抑えられます。また、シート端部に施工するシーリングは8年前後で寿命になることが多いです。

✔ 既存で雨天後に水たまりができる場合は、水たまりは改善できませんが、床面全体への耐水効果は担保されます。

✔ 耐水工程は、3工程の中で唯一、サビの原因そのものを抑制する工程です。 10年以上の維持を目指すなら、溶接補強・塗装の効果を長持ちさせるために欠かせない作業です。 逆に、解体まで数年なら費用対効果からお勧めしないこともあります。

維持年数と各工程の必要性、早見表

下記はあくまでも目安です。鉄骨の腐食度合い・立地・構造・工事条件によって判断は変わります。

「解体まで数年」でも安全上の問題が生じる段階なら、より広い範囲の補修が必要な場合もあります。

残り使用年数の目安 溶接補強 塗装 耐水工程
数年以内に解体予定 必要 最小限
タッチアップ程度
不要
5〜10年程度の維持 必要 必要 検討
状態次第
10年超の長期維持 必要 必要 推奨

貴重な工事費用を無駄にしないために

鉄骨溶接補強風景

補修工事は「やれること」の量に際限がありません。サビが出ている場所を全部直そうとすれば、 費用はいくらでも膨らみます。しかし「すべてを直す=無駄がない」ではありません。

重要なのは、残り使用年数に見合った工程の範囲を決めることです。 そのうえで、決めた範囲の工程を丁寧に実施する。これが「コストに無駄が生じない補修」の考え方です。

溶接補強・塗装・耐水の3工程は、それぞれが独立した効果を持ちながら、 組み合わさることで「サビの根本解決」に近づきます。 どこで線引きするかは使用年数と予算によって変わりますが、 その判断をオーナー様自身で見極めることは難しいのが現実です。

気になる症状がある場合は、弊社までお気軽にご相談ください

要約Q&A

Q:鉄骨階段の補修を検討している。まず何から考えればいいの?
A:「この階段をあと何年使うか」を工事前に設定することができれば、使用年数から逆算して必要な作業に絞られ、工事費用を計画的に使えます。

Q:溶接補強だけでは不十分なの?
A:数年以内に解体予定であれば、溶接補強だけ行って様子を見るという選択肢もあります。溶接補強+最小限の防錆塗装(タッチアップ塗装)で工事を止めるやり方です。ただし10年以上の維持が目的なら、溶接補強だけではサビの進行を止められないため、塗装工程や耐水工程とあわせて計画することをお勧めします。一度錆び切ってしまったら交換工事しか選択肢がなくなってしまうからです。

Q:鉄設備への塗装は見た目のためではないの?
A:主な目的は「溶接補強の効果を持続させること」です。塗膜で鉄骨を外気・湿気から遮断することで、補強効果を長持ちさせます。溶接補強後に塗装を省くと、補強への投資が短命になります。鉄塗装の役割は「外観の維持」ではなく「補強効果の維持」です。

Q:耐水工程は省くことができる?
A:耐水工程は階段のモルタル床面などへの雨水侵入や雨水接触を物理的に遮断して、サビの原因を抑制していく目的があります。3工程の中で唯一、根本原因に直接アプローチする工程であるため、維持年数(10年未満目安)によっては、必ずしも必要な工程ではないことがあります。

Q:耐水手段は、タキステップとウレタン防水、どちらがいい?
A:アパートの鉄骨外階段であれば、タキステップ等の長尺シートが耐久性・施工期間・維持コストの面で総合的に優れています。屋上や狭小バルコニーなど施工条件が限られる場合は、ウレタン防水が適することもあります。詳しくは、それぞれを比較(機能や費用相場)する記事をご確認ください。

Q:工事費用を抑えるコツは?
A:「すべてを直す」ことが必ずしも合理的とは言えません。また、「とりあえず直す」という考え方は費用を損する典型です。残り使用年数に見合った工程だけを選び、その範囲を丁寧に施工することが、コストの無駄を省く基本的な考え方です。

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