この記事を読んでいただきたい方:
建物で使っている鉄骨階段や廊下はどれくらいの寿命があるのか?耐用年数をどう見ればいいのか?延命修理の方法はどうすればいい?という疑問をお持ちの方向けの記事です
目次
階段鉄骨の耐用年数
鉄骨階段や外廊下の耐用年数は、条件付き(メンテナンス頻度・使用状況・鋼材選定など)ながら「40年」が最初の寿命ポイントです。これは多数の工事経験からの統計からです。
40年放置している(補修したことがない)階段と、10年周期くらいでメンテナンスをしている階段では強度に雲泥の差があり、補修工事に要する相場費用も比例するイメージです。参考として無塗装(塗装が剥げた状態)の鉄部を放置していると数年~15年で強度ダウン(腐食)して耐用限界を迎えることが多いです。
階段(廊下)は建物の一部なので減価償却に含まれ、その原価は工事費用(資材や人件費、ほか諸経費、税金など)になります。
鉄骨(無塗装)は放置してると10年~15年くらいが寿命
アパートや建物の外部にある「外部鉄骨」は、外階段や外廊下や手摺、門扉などの鉄骨設備があります。
これらの外部鉄骨の耐用年数について「一般的には・・」と答えるのが難しいですが、検討いただく参考として解説しますと、塗装コーティングや腐食補修が施されていない外部鉄骨は放置していると10年~15年くらいでボロボロになります。
ボロボロになる流れは
(1) 鉄部表面にサビ発生
↓
(2) 表面のサビが拡大、同時に鉄骨の内部に浸食」
↓
(3) 鉄骨強度が徐々に失われる」
↓
(4) 穴が空くなど人的被害の可能性」です。
お問合せをいただくタイミングは2~3が多いです。
(1)の鉄部表面のサビくらいであればオーナー様ご自身でDIY修理することもできるかもしれません。しかし、門扉や手すりなどは、パイプ形状であることが多いのでサビ腐食が発生したら数年でボロボロになります。
厄介なのは「サビは内部から発生するので気付きにくい」という点です。目に見えて穴が空いたときは、内側は真っ赤に錆びています。っと見た印象で「小さなサビ穴」でも、その鉄部の内側では広範囲に腐食が進んでいます。
鉄骨廊下の床面崩落事故から耐用年数を考える
平成28年10月6日、北海道で衝撃的な事故が起きました。アパート外廊下の鉄骨腐食によって、床の一部が崩落。怪我人が出た事件です。
参考:(朝日新聞)アパート外通路の床が抜ける 函館、警官6人転落し負傷
引用画像:函館新聞より
上記の事故の原因は、定期的なメンテナンスを怠った鉄骨劣化が原因です。老朽化した廊下の鉄骨が日常的にかかる荷重に耐えられなくなり、一部が瓦解したのだと考えられます。この現象は鉄骨の塗装工事だけしていても起こり得ます。鉄骨自体のサビ補修が前提です。
廊下崩落事故の原因について考察
以下のようなことが原因として考えられます。
・床面を支える「胴差し鉄骨」の強度ダウン?
・床面の下地となる「デッキプレート」の強度ダウン?
・そのほか、周辺の構造鉄骨部の強度ダウン?
これらの発生源は「床面から浸水する雨水」である場合がほとんどです。雨水の犠牲になる「胴差し鉄骨(廊下の外周部)」や「テッキプレート(廊下の床を支える鉄板)」は下記の工事例のように対処できます。
参考:胴差し鉄骨に大きな腐食ダメージがある場合の補修工事
参考:廊下やバルコニーのデッキプレートが劣化した場合の補修工事
参考:廊下への雨水侵入を防ぐタキストロン工事
消費者庁でも警鐘。鉄骨サビ腐食を「数字で見る」
平成28年3月に消費者庁が賃貸物件における「生命に危機をおよぼす不具合の発生」でも、オーナー様に注意を呼び掛けています。
引用画像:消費者庁「NewsReleaceより」
消費者庁に寄せられた不具合情報(653件)のうちの、鉄骨階段の不具合だけで20件にも及んでいます。報告のないものも含めれば、水面下で多くの鉄骨腐食の問題が起きています。アパートの建築ラッシュが30年くらい前にありましたが、この頃の鉄骨設備がメンテナンスを必要としている可能性があります。
鉄骨の耐用年数は「延命」できる!
築30年くらいの木造アパートがあったとします。このアパートに鉄骨製の外廊下と外階段があるとします。塗装工事を怠って10年以上放置していると危険信号です。まだまだ使える!と見た目で油断しないでくださいね。
修理や補修工事を考えたとき、アパートの階段や廊下をそっくり取り換えることは現実的では無いです。すでに入居されている方たちの生活動線となっているからです。
鉄骨の耐用年数を正確に数値化することは難しいです。しかし、よっぽどの腐食ダメージでない限りは寿命を伸ばす工事ができます。そして、定期的な鉄骨サビ対策(=鉄骨サビ補修、塗装コーティング、雨水対策など)を行っていれば、建物本体よりも長生きできるといっても過言ではありません。
「鉄骨の危険段階」を見極めるポイントとは
外階段や外廊下の危険段階を見極めるポイントはどこでしょうか?
※ここの記事はsuumoジャーナルさんに寄稿しています
手摺や門扉、目隠しパネルのような小さな設備であれば比較的簡易に修理できますが、鉄骨廊下のような大きな設備である場合「胴差し鉄骨(廊下の外周を囲う鉄骨)」に大きなサビ穴が空いていると要注意です。つまり、廊下の床面を支える強度に問題が発生しています。
以下の写真が「危険な胴差し鉄骨」の代表例です。
また、鉄骨階段であれば「ササラ桁」が重要な部分となります。このササラ桁の強度が健在であれば比較的安価で危険回避できることが多く、補強工事で耐用年数を伸ばすことができます。ササラ桁に強度が全く期待できない場合は黄色信号です。
鉄骨の耐用年数について記事を書いてみました。いかがでしたでしょうか。
経験上、当社で診断に伺って「あぁ・・これはもうダメだ。交換しかない」という判断に至る鉄骨設備は1割を切る程度です。
オーナー様、あきらめてしまう前に、鉄骨の耐用年数の延命をご検討ください。経験30年以上の職人が現地を直接診断します。鉄骨延命の策はお気軽にご相談ください。