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【業者解説】鉄骨延命工事後のメンテナンス完全ガイド

この記事を読んでいただきたい方:
鉄骨の補修・延命工事が終わったあと「今後のチェックポイントは?メンテナンスはどうしたらいいのか?専門的な視点が欲しい?」とお悩みのオーナー様向けの記事です。施工店が「鉄部 / 塗装 / 耐水」のメンテナンスに分けて解説します。

鉄骨強度確認

「鉄骨の補修工事が終わったけど、次のメンテナンスはいつ何をすればいいの?」
「費用の事情から見送った箇所はそのまま放置して大丈夫?」

高額な費用をかけた鉄骨延命工事。さらなる延命と資産価値を維持するためには、工事後の適切なメンテナンス計画が大切です。この記事では、鉄骨延命工事をした鉄工所の視点で、工事後にチェックすべきメンテナンスポイント、それぞれの寿命や注意点について解説します。

鉄骨延命工事後のメンテナンス計画

鉄骨溶接メンテナンス風景

鉄骨延命工事は下記のように、優先順位を絞って工事をすることで費用を節約しつつ、安全性を追求していきます。

  1. 人的被害回避
  2. 持続性の高い補強
  3. 外観(化粧)

鉄骨補修工事は際限なく腐食補修をするのではなく、予算内で最も危険な箇所から優先的に行っていきます。そのため、その後のメンテナンス計画では、作業から見送った箇所の腐食リスクを業者と共有しておくと無駄な出費をせず、効率的な設備維持ができると思います。

同じように、もし工事で足場を掛けていなかったとしたら、「足場を掛けないと目視できなかった部分」も今後のメンテナンス候補として記録しておくと良いでしょう。

鉄骨塗装工事後のメンテナンス計画

鉄部塗装メンテナンスケレン風景

鉄骨塗装のメンテナンス時期は、塗材グレードを問わず7〜8年で点検、塗り替えが理想です。

鉄骨塗装の役割は、単なる外観維持ではありません。鉄骨の酸化(腐食)の原因となる「保護膜」として重要な仕事をします。

鉄部塗装のメンテナンス塗り替え風景

なぜ7〜8年で塗り替えが必要なのか?
一般的に鉄部塗装に使われるウレタン塗料の保護機能の寿命が約7〜8年だからです。見た目には色が残っていても、紫外線や雨風によって塗膜は劣化し、粉をふいたり剥がれたり膨張したり、目に見えない小さな穴から水が浸透して内部の腐食を招きます。

参考:弊社は日本ペイントのファインウレタンU100を使用することが多いです

「錆び垂れ」は危険信号?
塗装後に接合部から茶色い「錆び垂れ」が出ることがあります。これは既存の鉄骨を残しながら利用していく場合は避けきれない現象です。しかしながら、表面にしっかりとした塗膜があれば、鉄骨を守る延命効果は機能しています。あまりにも錆び垂れが広範囲に及ぶ場合や、塗膜が膨れている場合は、既存鉄内部に潜在的にある錆びが影響している可能性があるので、次回の塗り替え時期を待たず、施工業者などに点検を依頼すると良いと思います。

鉄骨耐水工事後のメンテナンス計画

通路への長尺シート施工風景

共用廊下や階段、バルコニーの床に使われる長尺シートは、下の鉄骨を錆びから守る耐水アイテムとしてスタンダードになっています。実はこの製品、メーカーは「耐水」を謳っていません。しかしながら2.5mm厚さの複層ビニル構造なので物理的に浸水リスクを遮断するので弊社では耐水工事でおすすめしています。

参考:弊社はタキロンの長尺シート(タキステップ)を使用しています

床面に水たまりが残ったら?
古い建物の場合、床下地の歪みにより、長尺シート施工後に水たまりができることがあります。これはシートがしっかりと耐水して、水が下地へ浸透するのを防いでいる証拠です。ホウキで掃き出すか、自然乾燥で問題ありません。もちろんコストをかければ解決できなくもないですが費用対効果に懸念があります。

参考:長尺シート施工後の水たまりについて

長尺シート(タキステップ)のコーキング作業風景

長尺シート端部のシール(コーキング)に注意
長尺シート本体は非常に丈夫ですが、シートの端部に打たれるコーキングは経年劣化の影響を受けやすいです。コーキングは劣化するとひび割れ、破断、硬化することがあり、せっかく敷いた長尺シートの中への浸水を許してしまうリスクがあります。点検目安は塗装と同じく8年前後にしておくと安心です。

長尺シートのNGな使い方
長尺シートの製品そのものについて、長く使っていくためにはシートの上に鉢植えや物置を直接置いてしまうと、湿気がこもったり、肥料の薬品水が滲みたりと、シートやコーキングの劣化を早めてしまいます。また、ペットの糞尿もシートを傷める原因になります。

鉄骨本体 / 塗膜 / 長尺シート メンテ早見リスト

いかがでしたでしょうか。これまで書いてきた内容をまとめて、鉄骨補修工事の後のメンテナンス計画を「早見リスト」にしてみました。

鉄骨本体:
チェック時期:1〜2年に1回(目視)
チェック箇所:優先順位から外した懸念箇所、足場無しで工事から除外した懸念箇所

鉄部塗装:
チェック時期:7〜8年
チェック箇所:塗膜の粉吹き、膨れや広範囲の錆び垂れ

長尺シート:
チェック時期:7〜8年
チェック箇所:シートの敷設環境、コーキングのひび割れや破断

過去の補修工事記録、今後の想定工事範囲まで詰めておければ、工事前後の情報把握ができるので、「ココやったっけな・・」というような無駄な出費リスクを抑えて効率的な運用ができます。計画的な鉄骨補修計画は弊社までご相談ください。

また、DIYでどこまで補修できる?という記事もありますので合わせてご一読ください。

要約Q&A

Q:鉄骨補修工事後の鉄骨チェックはどうしたらいい?
A:当時の工事箇所の経過措置、前回の工事で見送りとした部分のチェックが必要です

Q:鉄骨補修工事後の塗装チェックはどうしたらいい?
A:塗膜の粉吹きや部分的な膨れや破断が生じていないか確認してください

Q:鉄骨補修工事後の耐水チェックはどうしたらいい?
A:長尺シートにうえに私物を置いていないこと、コーキングの品質に問題がないか確認してください

Q:次はいつ頃に点検メンテナンスが必要?
A:補強内容によりますが、基本的には8年前後で良いと思います。もし違和感を覚えたらすぐにご連絡ください

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