この記事をシェアする

錆びてボロボロになった鉄階段。交換?修理?いえいえ異なる方法で補修!

このようなオーナー様のお役に立つ記事です:
錆びてボロボロになったアパートの鉄階段。「入居者の怪我が心配、かといって今さら交換も・・。」とお悩みのオーナー様に、交換とは異なる延命補修方法をご紹介します。

今回の鉄階段の現状:
「鉄階段(廊下)の床面モルタルがひび割れがひどいので検査してもらいたい」とアパートオーナー様からのご相談があり、現地を拝見すると鉄階段の錆びは深刻でした(ほとんどメンテナンスされず放置されている状態)。

外階段の補修方法:
今回の外階段の補修方法は「修理」も「交換」もせずに古い段板の上から新しい段板を増設する工法。メリットは工事が短期間で済む点、工事中も歩行制限がほぼない点、安い費用で人的被害を回避できるという点です。この工事で外階段と廊下の耐久性は大幅に改善して鉄設備として延命されます。

外階段の溶接補修工事。工事前と工事後の写真

この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用は現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。

外階段の腐食原因を特定する

久しくメンテナンスをしていない外階段の腐食錆び

外階段の腐食にお悩みのオーナー様からご連絡をいただき現地調査に伺いました。お見立てとしては15年以上メンテナンス(鉄骨溶接修理や鉄部塗装など)をしていない状況でした。

オーナー様も親御様から相続したばかりで、建物自体の老朽化と向き合わなければならず、居住者様からの通告もあって外階段の腐食を目の当たりにしたという経緯でした。

腐食状況としては、踏み板(段板)の床モルタルが経年劣化で損傷しておりヒビ(クラック)が発生したり、腐食によって鉄板が膨張していました。この結果、床モルタルのヒビから雨水が入り込んで踏み板の腐食が加速して膨張も止まらず、ぐらつき始めています。

錆びの原因がわかる階段段板の断面イメージ図

踏み板のぐらつきを解説します。上の絵は階段の断面イメージです。階段の踏み板は受け皿となる鉄板(赤いライン)と、その上に打設されたモルタル(濃いグレー)で構成されています。

床モルタルの経年劣化によってヒビができます。このヒビの中に雨水が浸水して鉄板に到達すると腐食が始まります。この腐食で鉄板が膨張して、さらに浸水経路が広くなって腐食が加速していきます。この連鎖が長く続くと、強度が著しく低下して踏み板が荷重に耐えられずグラついたり落ちたりします。

アパート外階段の段板のサビ写真

調査時の床モルタル面です。手すりにも錆びが侵食しています。モルタルの劣化は鉄部錆びへの抵抗力を低下させます。

アパート外廊下の床モルタルの経年劣化と雨水浸水

廊下の状況です。こちらも錆び腐食の原因は床面モルタルの劣化にあります。いくら廊下の鉄骨を補強しても床面への浸水対策をしなければまた雨水が入って錆びが再発します。錆びの原因である「モルタル劣化」への耐水措置を講じないと、修理した鉄部にまた雨水が到達して錆びてしまいます。

「鉄骨サビの補強」「モルタル劣化の補修」のどちらかを省いてしまうと、工事費用の無駄になってしまうかもしれません。

【参考】塗装と鉄骨補強の関係も同じです。片方だけ終わらせても問題は解決しません。

鉄骨サビの補修補強をせずに塗装すると、後...

補修費用を考えるオーナー様、延命期間を明確に。

オーナー様が補修工事を考えるとき「工事期間中の入居者様へのケアや、ご近隣への配慮、工事費用」などの多くの要素が脳裏をよぎると思います。工事費用を考えるとき「建物の残りの運用年数」から逆算して考えれば無駄のない出費になります。

「この補修工事が正解なのか」は、「ご資産の維持年数に沿った補修範囲であるか」が大切だと弊社は考えます。維持年数は建物によってまちまちなので補修費用の相場というものがなく、オーナー様は自分の建物のことだけを考えれば良いわけです。

上記をオーナー様と話し合い、今回の階段補修工事は下記のような選択でコストを絞ります。

  • 手すりの錆び(欠損)→ 交換しないで補修で済ませよう
  • 廊下屋根鐵骨の老朽化→ 部分的な補強であとは様子を見よう
  • 廊下モルタルの劣化(浸水)→タキストロンで雨水対策しよう
  • 廊下デッキプレートの腐食 → 深刻部分だけカバーしてあとは対処療法でいこう
  • 段板の錆び劣化 → 修理に耐えられない。・・けど交換もしないで補修しよう

工事対象のほとんどは延命補修OKでしたが段板だけは延命不可能。一般的には新しい段板に交換しますが・・今回は既存の段板をそのまま残して上から新しい鉄板を乗せて費用削減で延命します。

ただこの工法は条件があります。既存のササラ桁が健在であることです。全ての階段劣化に共通している工法ではありません。維持年数と現在の階段強度などの周辺環境から最適解の補修プランを考えます。

錆び腐食した段板に新しい段板を「被せる」

階段段板の補修方法

古い段板をそのままに、チェッカープレート(縞板鋼板)を被せて溶接します。(歩行用の養生ベニヤ板が敷かれた写真です)。この工法のメリットは「工事期間の短縮・使用制限の軽減(ほぼ無い)・既存鉄部の負荷が最低限」である点です。結果的に「工事費用の削減」と「入居者様、近隣住民様のご負担軽減」につながります。

人がすでにお住まいの改修工事は、新築工事と違っていろいろ気を遣わないといけません。

補修工事中はご近隣や入居者様への影響(作業音や工事臭)への配慮が必要です。また、入居者様などのご利用上の不便も考慮すべきです。工期の短縮はこれらの問題を軽減します。同時に、工期が短縮すれば工賃も下がるので工事費用も節約できます。

外階段の段板交換溶接

新しい段板を既存のササラ桁と溶接します。赤茶色になっているのは溶接した部分を保護する防錆塗装の色です。このあと仕上げ塗膜を施して完成です。

サビ補修工事が終わった外階段

これで外階段の補修が完了しました。

新しい段板を被せて設置」「ササラ桁の補強」「手すりの補修」が今回のメイン作業となります。これで鉄骨階段は大幅に延命されました。段板を踏んだときの安心感が全く違うことに驚かれると思います。

廊下の補強方法と、床への雨水対策を行う

廊下屋根鉄骨のサビ補修

今回の外廊下の補修工事は、まず「廊下の補強」から始めます。

廊下の屋根を補強するために、廊下の手すりを使って「補強鉄骨(黒色)」を増設して屋根を支えます。屋根の荷重負担を分散さるためです。

廊下の屋根下地鉄骨のサビ腐食を補修

補強鉄骨(黒色)」が屋根鉄骨を支えているのがわかります。廊下手すりと屋根鉄骨が連結したので、屋根鉄骨にかかる荷重が分散されて製品寿命が延びます。

外廊下にタキストロンを施工中

つづいて、劣化した廊下床面への雨水浸入を防ぐ工事です。

劣化した床面モルタルを全部打ち替えるのは困難で高額なのと、その間の入居者様のご不便を考えると現実的ではありません。そこで長尺シートのタキストロンを使って廊下床面を保護します。

参考:長尺シートはタキロン社のタキストロンを使用しています

モルタルの劣化を解消するとき、「鉄骨に雨水が浸入しない」ことが最優先なので、長尺シートを敷設して雨水をブロックすれば手っ取り早く解決します。結果として、廊下鉄骨の寿命も延びます。

タキストロンと端部コーキングシール

鉄骨と長尺シートのすき間に雨水が入らないようにコーキングシールを充填します。この作業でシート端部からの雨水浸入をブロックします。

長尺シート(タキストロン)の耐久性は10年以上ありますが、端部のシールは7年前後で打ち替え(打ち増し)が必要です。後々のメンテナンスではシーリング作業だけで済むので経済的です。

【参考】タキストロンはチェッカープレート(鉄板)の廊下でも施工できます。

鉄骨廊下と階段の現状(鉄骨サビ度:★★★...

デッキプレート腐食はボンデ鋼板でカバー

デッキプレートの腐食補強

廊下を下から見上げると見える「デッキプレート(凸凹形状の鉄板)」。この製品は床面のモルタルを支える役割があります。雨水浸入で腐食したデッキプレートはボンデ鋼板で補強しました。

廊下の床面モルタルが老朽化すると、デッキプレートが真っ先に錆びの被害に遭います。外廊下の強度トラブルの原因としてナンバーワンです。床面に長尺シートを敷設したので、デッキプレートも安泰。これで補修工事はすべて完了です。

オーナー様にぜひお伝えしたいです。補修工事の方法は千差万別で迷われてしまうと思いますが、工事方法を決める方程式は・・・

建物維持年数 ÷(入居者様+工期+費用+外観+効果)」です!
(なんだかわかりづらくなったような・・。お会いして解説させてください)

鉄骨補修は専門知識と経験と技術が必要です。弊社がアパートオーナー様のお役に立ちます。