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鉄骨階段の寿命を50年以上にできる?今やるべきことは?

この記事を読んでいただきたい方:
築年数が経過した(特に築30年~40年以上)アパートや戸建てのオーナー様、見た目が古びているがあと何年くらい安全に使える(寿命)のか目安が知りたいオーナー様、事故が起きる前に専門家がどのような状態を「危険」と判断するのか基準を知っておきたいオーナー様に向けた記事です。

老朽化腐食が始まった鉄骨階段

鉄骨階段の寿命とメンテナンスの重要性

外階段の段板のサビ

経験上(鉄骨補修工事)、おおよそ鉄骨階段の寿命は40年前後が節目です。逆算すると1980年代の建物ということになります。

この記事は、鉄骨階段の寿命を50年以上に延ばすためのメンテナンス方法について解説します。50年以上の延命には「これまでのメンテナンス履歴」が重要になります。例えば・・

  • 40年ぐらいほぼ未整備: かなり厳しいです。延命にはそれなりに作業と費用が必要
  • 8年前後の定期的な塗装: さらに10~15年以上、使用できる可能性があります
  • 構造鉄骨に補強履歴がある: 20年以上の延命も期待できます

結論から申し上げますと、鉄部塗装だけでは不十分です。40年前後の経年劣化があれば錆びの影響に無縁ではないので、構造強度を維持するために溶接などの鉄骨補強工事が不可欠です。(虫歯と同じです・・)

 鉄骨階段を50年以上使用するための条件

外階段のウレタン塗装

鉄骨階段を50年以上もたせるには、過去よりの定期的な補修工事が必要です。目安としては・・

  • おすすめのメンテナンス周期: 7〜8年に1回。これは、鉄骨の保護に使われる塗料の膜(塗膜)の寿命が約7〜8年であるためです。ほか、耐水アイテムのシール(コーキング材)の寿命も8年前後なので、メンテナンスのタイミングとして理想です。
  • 鉄骨メンテナンスの目的: 鉄は雨水や空気に触れることで酸化して錆び(腐食)が発生します。この錆びが鉄表面から内部にまで進行すると、鉄骨強度の危険性が出てきます。この人的被害リスクを回避するための工事が鉄骨メンテナンスの目的です。

鉄骨の健康管理は「錆びの管理」ともいえます。塗装だけで錆びを隠すのではなく、穴が開いた場合は、溶接補強工事を検討してください。アパートの階段などは建物と同じく50年以上の寿命を求められることが多いからです。

 塗装だけでは補修工事として不十分なケース

錆びによる腐食が構造部に達している場合、塗装の前に鉄骨補強工事が必要です。放置すると極めて危険です。緊急性の高い腐食箇所を鉄骨階段、鉄骨廊下を例に端的にご説明します。

階段のササラ桁の錆び腐食

鉄骨階段の場合は「ササラ桁」という構造フレームに注目してください。ここは、ステップ(段板)にかかる荷重を支える、鉄骨強度の重要な場所です。

この「ササラ桁」に穴があくと段板を支えられなくなり、段板が抜け落ちます。溶接による鉄骨補修をすることで強度を復旧して、安全に階段を使えるようになります。

廊下胴差鉄骨の錆び穴

鉄骨廊下の場合は「胴差鉄骨」という構造フレームに注目してください。こちらも先ほどの階段のように廊下床面を支える重要な骨組みです。

この「胴差鉄骨」が腐食していくことで床を支えきれなくなって、床が崩落するという事故が起きます。こちらも早い段階であれば溶接補強で延命措置をすることができます。

参考:アパートの外廊下の床抜けたか 引っ越し業者2人搬送(産経新聞)

2016年にSUUMO様から取材をいただきました。こちらの記事も参考になります。

参考:アパート外廊下の床が抜けて大怪我! キケンな状態の見分け方は?(SUUMOジャーナル)

https://suumo.jp/journal/2016/10/24/119883/

階段のササラ桁、廊下の胴差鉄骨はそれぞれ設備の構造の中心なので、腐食を放置すると構造強度がなくなり事故につながります。(ほかにも柱なども当然、構造フレームです)

塗装する前にしっかり溶接などの補強で安全性を確保しておくことが50年超えの寿命に繋がります。

50年以上を目指す管理は、腐食錆びの管理といえます

鉄骨の補修延命工事(溶接)

場当たり的な修理は、長期的に見て費用がかさむだけでなく、安全性の確保にもつながりません。建物の寿命から逆算し、計画的なメンテナンスと補強工事を検討することで「長寿命」につながって生涯コストを軽くできます。鉄骨補修のご相談をお待ちしております。

要約Q&A

Q:鉄骨階段の寿命は?
A:虫歯と同じで、放置していた期間と反比例して短命になりますが、おおよそ40年前後あたりに強度の節目を迎えるケースが多いです。

Q:かなり放置していても延命できる?
A:絶対とはいえませんが、「条件付き」「副作用あり」というお約束で延命を達成できることが多いです。詳しくは鉄骨延命工事のデメリットをご覧ください。

Q:業者に相談すべきタイミングは?
A:鉄骨設備の構造部に腐食が発生したときです。具体的には鉄骨階段のササラ桁や、鉄骨廊下の胴差鉄骨、ベランダの柱など、「ここが欠落したら人命に関わる」部分に錆びを確認したときはご相談ください

Q:延命工事にはどんな種類があるの?
A:強度危機にある鉄骨を補強する「溶接補強工事」、補強効果を維持する「鉄骨塗装工事」、錆びの原因(浸水ルート)を絶つ「耐水工事」が主です。状況に応じて適切な取捨選択が必要です。

Q:補修工事の費用は?
A:工事範囲や内容に影響するので明確なお答えが難しいです。簡単に済めば数万円で終わることもあります。しかしながら、工事費用の目安として「丸ごと交換する大工事」の半額や3分の1くらいでないと補修工事として成立しないと思っています。

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