この記事でわかる情報:
階段錆びの原因になる浸水被害のしくみと、対策の選択肢となるタキステップや防水塗膜を、機能面、費用面などからわかりやすい比較情報を把握いただけます

床がモルタルになっている外部階段や、共用廊下で多く起きる「腐食トラブル」は、以下のような劣化の連鎖になります。
モルタルに浸水 → クラック発生 → 鉄骨腐食 → クラック拡大 → 鉄骨腐食拡大…
「どうやって、モルタル内部に水が回らないようにするの?」と、ご相談をいただくことが多いので、長尺シート施工、ウレタン防水、ウレタン塗膜を機能比較しつつ、費用目安もご紹介します。
目次
階段の断面構造から見る、浸水被害のしくみ

鉄骨階段の断面構造は、上記のように「下地の鉄板(赤い線)+モルタル(グレーの部分)」という組合せであることがわかります。

階段のステップ(踏み板)のモルタルは、10年以上が経過したあたりから、経年劣化でクラック(ひび)が発生することがあります。
クラックができると、そのすき間から雨水が下地の鉄板に浸み込みます。浸水した鉄板はサビを起こし、サビが膨張することで今度はモルタル自体を押し割ります。これが繰り返されると、ステップの安全性が維持できなくなり、ステップ踏み外し事故などにつながります。

また、専門的な視点でみると、ステップの鼻先は、上記サンプルのように「鉄板」と「モルタル」と、異なる建材が交わっているので、隙間が生まれやすく、ここから浸水するケースがとても多いのです。
これらの浸水被害への工法(アイテム)について、比較情報をご紹介します。
耐水手段(★★★):長尺シートの機能と相場費用

塩ビ系の床シートを専用接着剤で貼り、防水層として機能させる工法です。
参考:タキロンマテックス株式会社:長尺シート(タキステップ)製品情報
■ メリット
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エンボス処理で滑りにくい
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摩耗に強い
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見た目が良い(空室対策)
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工期が比較的短い
■ デメリット
-
下地不陸凸凹の影響を受ける
-
端部シーリングが劣化すると再浸水リスク
-
下地補修の費用がかかる(クラック埋め)
- 下地含水で膨れリスク
■ 耐久目安
約10~15年(端部シーリングは8年前後)
■ 相場費用
階段1段あたり、8,500円ほど ※下地補正、シーリング別途
■ 総括

長尺シート(タキステップ)は、鉄板とモルタルの隙間を物理的に覆ってしまうので、長い延命効果が得られます。
費用面で、ほかの耐水手段に比べて割高ですが、短工期(塗布防水の50%短縮)なので、居住者様の生活負担が少なく、歩行頻度が高い共用廊下・階段での工事に向いています。
耐水手段(★★☆):ウレタン防水の機能と相場費用

液状ウレタンを塗り重ね、弾性のある防水膜を形成する工事です。
■ メリット
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廊下床の段差や、パイプ位置などの雑形状に強い
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立上り処理(水平から垂直方向へ)がしやすい
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頻度や劣化具合によっては重ね塗り可能
■ デメリット
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乾燥期間が必要(夏は2日ほど~冬は3日ほど)
- 歩行制限が比較的長い
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摩耗にやや弱い
- 滑る(雨天時は注意)
-
下地含水で膨れリスク
■ 耐久目安
8~10年(トップコート管理で延命の可能性)
■ 相場費用
階段1段あたり、8,000円ほど
■ 総括

塗膜防水は、摩耗によって鉄板とモルタルの隙間が再生しやすいので、延命効果にやや懸念が残ります。
また、雨天時に滑りやすいので、階段や廊下などの頻繁な歩行するエリアには不向きですが、廊下の段差や鉄骨取り合いなどの複雑な下地であるケースや。施工リアが狭かったり変則的にあるケースでは、連続で塗布できるので有用です。
耐水手段?(☆☆☆):ウレタン塗膜の機能と相場費用

ここが混同されやすい部分です。「ウレタン」と言っても塗膜防水用ウレタンと、
一般塗装用ウレタン塗料は別物です。つまり防水機能は、ほぼないです。
経験上、アパート階段で塗られているものは、たいていウレタン塗膜なので、
「防水膜が以前からあった?」と誤解されます。
■ メリット
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低コスト
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工期が短い
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色変更が容易
■ デメリット(重要)
-
防水性能は低い
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クラック追従性が乏しい
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摩耗に弱い
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床下地の汚れ・補修跡が見えやすい
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数年で再塗装が必要になるケースが多い
■ 耐久目安
3~5年程度
■ 相場
階段1段あたり、4,000円ほど
■ 総括
実は、モルタル床の階段は、ほとんどコレだと思います。防水機能があるわけではないので、10年もすれば浸水し放題になってしまいますが、見た目(カラーリング)を容易に変えることができます。
ちなみに、ノンスリップ金物

参考情報です。
よく見る「ノンスリップ金物」の断面写真です。登り下りで滑らないように設置されるものですが、この製品はビスで固定されます。経年劣化によってビスの緩みや隙間を経路としてモルタルに浸水するリスクがあります。
鉄骨階段の寿命維持という意味では、弊社の見解としては、あまりお勧めしません。
耐水手段の早見表
上記でご紹介した工法の機能、相場費用の早見表です。
※あくまで目安です。現地状況によって異なります
| 項目 | 長尺シート | 塗膜防水 | ウレタン塗装 |
|---|---|---|---|
| 防水性能 | 高い | 高い | 低い |
| 摩耗耐性 | 強い | 中 | 弱い |
| クラック追従 | 低~中 | 高 | 低 |
| 意匠性 | 高い | 中 | 中 |
| 耐久 | 10~15年 | 8~12年 | 3~5年 |
| 費用 | 中~高 | 中 | 低 |
実務的な判断基準として、例えば下記が参考になると思います。
✔ 鉄骨腐食を止めたい → 防水機能必須
✔ 雨水浸透を遮断したい → 長尺シート or ウレタン防水
✔ とりあえず見た目を整えたい → ウレタン塗装
また、下記の症状がある場合は防水措置だけでは解決しないので、
溶接補強工事も必須となります。
✔ ステップの下に錆垂れが出ている → ステップの溶接補強
✔ 鉄骨がグラグラする → 下地が外れている可能性、鉄骨補強
✔ 鉄骨に穴が空いている → 安全不安の可能性、鋼板補強
鉄骨階段の事故回避、お気軽にご相談ください。

結局、どの工法がいいの?とご不安のことと思います。弊社は工事前にできるだけ説明を尽くします。「なぜこの工法がいいのか」、「今後の対応に何を予測するのか」、「維持年数からの有用性はあるのか」など、オーナー様にご納得いただく形で補修プランをご提案しています。
鉄骨階段の事故は、人命に直結します。
半世紀以上、鉄骨一本で仕事をしてきた弊社にお気軽にご相談ください。
要約Q&A
Q:鉄骨階段はどうやって錆びていくの?
A:モルタルの経年劣化でひびが入り、そこから雨水が鉄板に浸み込んでサビが発生するためです。サビがモルタルをさらに割り、浸水が拡大する悪循環が起きます。とくにステップ先端(鼻先)は隙間ができやすく、要注意です。
Q:放置するとどうなる?
A:表面的な錆びが進化して、ステップの踏み抜けや転落事故のリスクが生じます。補修工事の規模も大きくなり、費用が増大します。鉄骨階段の事故は人命に直結するため、早期対処が重要です。
Q:階段の浸水対策の工法にはどんな種類がある?
A:主に3種類あります。①長尺シート(タキステップ)、②ウレタン防水、③ウレタン塗装です。このうち③ウレタン塗装は防水性能がほぼなく、見た目の補修のみで浸水対策にはなりません
Q:階段への長尺シート(タキステップ)とはどんな工法?
A:塩ビ製のシートを専用接着剤で貼り、モルタルと鉄板の隙間を物理的に覆う工法です。防水性・耐摩耗性・意匠性を兼ね備え、工期も短いため入居者への歩行制限が少なく済みます。耐久年数は約10〜15年、費用目安は階段1段あたり約8,500円(下地補正・シーリング別途)です。
Q:階段へのウレタン防水とはどんな工法?
A:液状ウレタンを塗り重ねて弾性のある防水膜を形成する工法です。段差やパイプ周りなど複雑な形状に対応しやすい反面、乾燥に2〜3日(冬季はそれ以上も)かかるため歩行制限が長くなります。雨天時に滑りやすい点も注意が必要です。耐久年数は約8〜10年、費用目安は階段1段あたり約8,000円です。
Q:ただのウレタン塗装は、階段の浸水対策になる?
A:なりません。ウレタン塗装は一般的な塗料で、防水性能はほとんどありません。実際、多くのアパート階段はウレタン塗装のみで実質的に無防水状態です。見た目の改善には有効ですが、耐久年数は3〜5年程度と短く、浸水対策としての価値はほとんどありません。費用目安は階段1段あたり約4,000円です。
Q:どの工法を選べばいいの?
A:雨水浸透を遮断したい場合は長尺シートまたはウレタン防水です。形状が複雑な箇所はウレタン防水が有利で、歩行頻度が高い階段・廊下は長尺シートが向いています。見た目のみ整えたい場合はウレタン塗装ですが、浸水は止まりません。迷った場合は現地調査による専門家の診断が最も確実です。
Q:階段の延命のために、防水工事だけで解決する?
A:症状によっては溶接補強も必要です。ステップ下に錆垂れが出ている・鉄骨がグラつく・鉄骨に穴が空いているといった場合は、防水工事に加えて鉄骨の溶接補強や鋼板補強が必要になります。
Q:まず何をすればいいですか?
A:まず専門業者による現地調査を受けることをお勧めします。モルタルにひびが入っている・ステップ端がサビで膨らんでいる・最後の補修から10年以上経過しているといった状態であれば、早めのご相談が安心です。
