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【施工店の見解】鉄階段の浸水対策の比較。タキステップ/防水塗膜/ノンスリ金物

この記事を読んでいただきたい方:
階段錆びの原因である浸水のメカニズムと、この対策の選択肢となるタキステップや防水塗膜、ノンスリップ金物などを検討されているオーナー様に、タキステップが比較的に優秀であることを施工点の見解を踏まえて解説する記事です。

階段タキステップ工事

いきなり結論ですが、鉄骨階段の浸水対策はタキステップ(長尺シート)がコストパフォーマンス的にも一番効果的であると思います。

参考:タキステップ3W(タキロンマテックス株式会社様)

階段錆びの原因である「浸水」の仕組みを踏まえて「タキステップの先端構造が耐水補修に適している」と考えるからです。その理由を下記にて書き残します。

「浸水」の仕組み:階段の断面から見る

鉄骨製の外階段の多くは、ステップ(床面)にモルタルやコンクリートを打設しています。しっかりた構造に見えますが、ステップの断面を見ると「水の通り道」が存在していることがわかります。

まず、鉄骨階段は大きく分けて2種類のタイプがあります。「蹴込板」と呼ばれる、ステップとステップの間がふさがっているタイプと、ふさがっていないタイプです。

  • 蹴込板があるタイプ:ステップと蹴込板で囲い、そこにモルタルを充填

  • 蹴込板がないタイプ:ステップの鉄板のみでモルタルを支える構造

下の2枚の階段写真で1枚目は蹴込板(ステップ間の垂直板)がない階段、2枚目は蹴込板がある階段です。

蹴込板がある鉄骨階段 蹴込板がない鉄骨階段

次に、それぞれのステップの断面イメージです。赤いラインがステップの鉄板断面を表しています。

蹴上板なしの階段断面イメージ 蹴上板ありの階段断面イメージ

次に、赤いラインの鉄板断面のサンプルを作ってみました。

階段のステップへの浸水イメージ
ステップは、お盆のように曲げた鉄板の内側にモルタルを流しているのがわかると思います。鉄骨階段の弱点は、ステップの鼻先で、異なる資材が隣り合って作られている部分です。「ココ!」と矢印をしているところです。

  • 通行時にこの鼻先を靴で頻繁に擦る
  • 他の部位に比べて薄い鉄板が使わている

上の2つの事情によって、だんたんと鉄板とモルタルの間に隙間ができます。そして、この隙間に「水の通り道」ができて腐食が始まります。これが浸水の仕組みです。

説明が長くなってしまいましたが、これを踏まえてタキステップの有能性を解説します。

浸水対策の比較:タキステップ/防水塗膜/ノンスリ金物

階段ステップにタキステップを敷設するイメージ
タキステップに代表される長尺シートの場合、先述のステップの鼻先を、ぶ厚い樹脂製ノンスリップでカバーします。登り下りで靴が擦る、荷重がかかるという負荷に強く、ほぼ摩耗せず浸水経路を抑止します。これが延命補修を専らとする弊社がタキステップを一番におすすめする理由です。

  • 踏面から先端まで一体で覆い、浸水経路を遮断

  • ノンスリップ機能付きで摩耗に強く、長期間耐水性能を維持

  • 接着固定のため、ビス穴からの浸水リスクがゼロ

  • 接着施工のため、階段の使用制限が短期間で済む

このため、階段延命補修において最も高い効果を発揮します。また、耐水対策の方法問わず、モルタル面への浸水を遮断することで行き場を失った雨水が床面に停滞することがありますのでご留意ください。

階段ステップに塗膜防水をするイメージ
参考に、従来の防水塗膜を使った耐水方法はこのようになります。この場合、塗膜はモルタル面にはしっかり密着しますが、ステップ先端にある鉄部分への密着部分は数ミリ前後しかないのがわかりますね。この状態だと、登り下りによる頻繁な荷重で塗膜が摩耗して薄くなり剥がれてしまいます。結果的に、摩耗して剥がれた塗膜に浸水経路が作られて内部腐食が早く発生します。

  • モルタル面には密着するが、鉄部分には数ミリ程度しか塗布できない

  • 歩行荷重や摩耗で剥離しやすく、短期間で浸水経路が再び発生

  • 塗膜が乾くまで、階段にそれなりの使用制限がかかる可能性
  • 補修サイクルが短くなり、長期的なコストが増加

実際には、ステップには防水ではなく通常ウレタンを塗布することも多いです。屋上に塗布されるのは防水塗膜ですが濡れると滑りやすいですよね。

階段ステップノンスリップ金物を固定するイメージ
参考に、こちらがよく見る「ノンスリップ金物」です。登り下りで滑らないように設置されるものですがこの製品はビスで固定されます。経年劣化によってビスの緩みや隙間を経路としてモルタルに浸水するリスクがあります

  • 滑り止め効果は高いが、ビス固定部から浸水する可能性大

  • 経年でビスの緩みや隙間が生じ、腐食原因となるため後施工は非推奨

階段の浸水の仕組みと、浸水対策で「ステップ鼻先への耐水措置」という点で、タキステップがとても便利ということを、長文で書いてしまいました。浸水対策の参考にしていただければ幸いです。

参考:タキステップのメーカー(タキロンマテックス)記事

参考:タキステップの特徴(タキロンマテックス)記事

タキステップを施工したあとの管理について

タキステップを施工したあと、製品寿命と機能を維持するために下記のようなお話をオーナー様にご説明させていただいております。

  1. 鉢植えやペット尿の接触を避ける
    水や薬品、アンモニアが長尺シート表面に悪影響を与えます。

  2. ワックスは使用しない
    防滑性が低下し、安全性が損なわれます。

  3. コーキングの劣化点検
    周囲のシールが割れると隙間から浸水します。シール寿命は7年前後なので経過観察を。

要約Q&A

Q:鉄骨階段の錆び腐食の原因は?
A:鉄部と鉄部、鉄部と別資材の隙間に浸水(湿気)がついて錆びます

Q:階段の一番の腐食ポイントは?
A:ステップ(段板)は頻繁に荷重がかかり、その割に華奢な作りなので、弱点といえます

Q:階段への浸水の仕組みは?
A:ステップの先端(ステップ鼻先)が、構造や利用シーンなどの影響で浸水します

Q:浸水への対策(耐水工法)は?
A:長尺シート(タキステップ)や防水塗膜、ノンスリ金物があります。長尺シートのメーカーが耐水をアピールすることはありませんが、施工店としてはタキステップがとても効率的だと思います。

Q:耐水することで副作用はあるの?
A:これまで浸水してきた水が行き場を失うことで床面に停滞することがありますが、自然乾燥を待ったり、ホウキでさっと掃いて対応することが多いです。コストをかければ水の停滞事情も解決できると思いますが費用対効果を考えて見送るオーナー様が多いです。そもそもの解決の根本は「鉄骨資産の延命」です。

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