この記事を読んでいただきたい方:
鉄骨が錆びてくると壊れたりしないかと不安になるかと思います。そこで鉄骨階段や廊下(外部鉄骨)の補修工事に関する「優先事項」「見極めポイント」「レベル別の工法解説」を書きました。鉄骨サビに関する補修情報を知りたい建物オーナー様のお役に立つ記事です。
目次
鉄骨サビ腐食の現場調査に伺いました
こちらがお問合せをいただいた4階建てのアパートです。建物オーナー様とさっそく外部階段の腐食状況を診断していきます。
人的被害の回避が補強工事の出発点
「こんな感じなんですが・・・修理でいけますか。よその業者さんに聞いたらお手上げされてしまって・・」とオーナー様。
鉄骨階段の裏側(背中側?)です。鉄部のサビ腐食がかなり進んで老朽化しています。
しかし、ササラ桁の強度が残っていたのが幸いです。ササラ桁を起点にした補強が行えそうです。鉄骨階段の補修補強工事において、ササラ桁に残された強度が大きく影響します。
ササラ桁を起点にした補修工事方法をご紹介します。
ササラ桁のダメージなし→参考(1):ササラ桁をそのまま再利用した簡易的な補修工事
ササラ桁のダメージあり→参考(2):ササラ桁に補強を行ってた鉄骨延命工事
以下、鉄骨の腐食状況の写真です。
こちらは踊り場の鉄骨の側面です。鉄板部はほとんど「厚紙」のような状況に。
とはいえ、踊り場の鉄骨やササラ桁の鉄骨強度がまだ残っていたので、補強工事で対応できそうです。オーナー様どうぞ安心なさってください。当社なら人的被害の回避させます。
「あと何年もたせるのか」を教えてください
鉄骨補修工事の目的とは「ケガなく安全に利用できる」ことです。
これを踏まえて、次に考えることは「どれくらいの間、ケガなく安全に利用するか」です。
すぐに大規模改修工事や取り壊しなどの予定が控えていれば「とりあえずの補修工事」で十分なのかもしません。
つまり、「あと何年、この鉄骨をもたせるのか」で補修工事の方法は変わってきます。
鉄骨の天敵「雨水」との付き合い方と、補修方針
鉄は天然の素材なので、だんだんと朽ちていくことは木材と同じです。建物外部の鉄骨の寿命も雨水が主な原因となって酸化していきます。雨水対策をせずに鉄骨補強の工事をしても、その補強効果は100%発揮されません。
とはいえ、「残り数年でアパートを取り壊します」ということであれば鉄骨の補強だけをして、雨水対策には手を付けなくてもも良いのでは・・?というのが当社の考え方です。
費用をかけても意味のない工事はご提案いたしません。
延命補修でカバーできる主要な処置内容
補修内容 | 目的・効果 | 留意点 |
---|---|---|
腐食部の切除・除去処理 | 劣化した部分を切除して、新しい材を接合可能な状態にする | 切除後の断面処理、段差や応力集中に注意 |
溶接による補強・肉厚付加 | 薄くなった断面を補強材で補填する | 熱による変形の管理、溶接品質の確保 |
鉄部塗装 | 鉄部の酸化を防ぐため、鉄部表面に塗膜をつけて経年劣化を軽減する | 旧塗膜の状態、下地処理の丁寧さが効果に直結 |
部分交換(プレート補填など) | 被害が大きい個所だけを交換し、全体を維持 | 接合部の耐久性確保、施工精度の確保 |
補強材併用(リブ・L字材など) | 劣化部とは別構成で補強を併用し、強度を回復 | 余剰応力や荷重伝達の見直しが必要 |
鉄骨補修工事のレベル別3つの補修工法
このホームページでたくさんの鉄骨補修の工事例をご紹介していますが、鉄骨のダメージ具合や維持年数の目処によって段階別に3種類の補修工法に分けています。どの工法を選ぶかはオーナー様の運営方針次第です。
段階1:「とりあえず」の鉄骨補修
補修範囲は【応急処置】です。残り数年で解体するご予定の建物であればオススメです。最低限の補修のみ行います。工事の費用対効果としては限られていますが「残り数年の維持」と割り切った補修も可能です。
段階2:鉄骨強度の現状復旧工事
現在腐食している鉄骨を【暫定的に補修】します。サビの発生源を断つ作業を除外するので工費は抑えられます。サビ再発のリスクは変わりませんが、現状問題のある腐食部分を溶接補修します。
段階3:サビ腐食の原因から補修して延命補修
残り10年以上の維持をお考えであれば、人的被害を回避する溶接補修工事と合わせて、工事後のサビ再発リスクを軽減する【サビ予防】の工事をお勧めします。サビ腐食の原因は外部から浸入する雨水がほとんどなので、雨水の浸入路をブロックしたり、塗装皮膜を付けたりする「雨水対策」が延命には効果的です。
・・ちなみに「段階4」は補修では対応できないほどの腐食ダメージがある場合です。つまり、鉄骨設備の交換工事ということですが、ご提案する可能性は低いです。最終手段です。
もうひとつ、「段階0」もあります。鉄骨に穴などが開いておらず、簡易的な塗装補修でリカバリーできる場合です。DIYで錆び補修の方法もご紹介します。
今回お打合せをしたオーナー様は「この建物はまだ10年、15年と使っていきたい」という運用計画をお持ちでしたので「段階3」の「鉄骨補強と雨水対策」をご提案いたしました。
以下が「鉄骨補強と雨水対策」の工事後です。ご覧になってください。
このように鉄骨補修の方法は、何よりもオーナー様のご意志と人的被害の回避を指針としてご提案します。
1番目に優先するもの → オーナー様のご意志(ご資産の運営方針)と人的被害の回避
2番目に優先するもの → サビ腐食のダメージ具合
3番目に優先するもの → 時間(工期)や値段コスト
この他、領収証やご請求書の宛名や扱い、保険範囲内の補修工事についてもオーナー様のご事情にできるだけ対応して行いますのでお気軽にご相談ください。