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「あと10年、15年の限定延命」で鉄骨補強工事をコストダウンする

この記事を読んでいただきたい方:
鉄骨階段や廊下の錆びや腐食に悩んでいるが、アパート建物を長く使う予定がないので、あと10〜15年程度を維持できれば良いとお考えのアパートオーナー様に向けた記事です。具体的なコストバランスの解説もしています。

修繕改革と鉄骨設備

建物と設備、寿命の帳尻を合わせるために:
アパートの鉄骨設備(階段や廊下など)が錆びてきたとき、すべてを新しく直す必要はないと思いませんか。「あと何年使うか」から逆算して、必要最小限の費用で安全を確保するほうが賢いオーナーの選択ではないでしょうか。

この記事では、例として「居住者様の事故は避けたいが、あと10〜15年を維持できればいい」という方針で行った、コストパフォーマンスに優れた鉄骨補強工事の実例をご紹介します。

課題:オーナーとしての管理義務と、資金繰り

アパートオーナー様(賃貸人)は、民法(606条)で収益物件の安全管理が義務付けられています。居住者様の事故を未然に防ぐことは、オーナー様には重要なことです。

民法606条 賃貸人の修繕義務:
賃貸人は、賃借物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う
参考:住宅賃貸に関する民法改正資料(国土交通省)

とはいえ、オーナー様は、重なる老朽化リスクに対して、収支を経た資金で賄うわけですから、なんでもかんでも派手な工事をすれば良いわけではない・・。
理想と現実にギャップはつきものです。たくさんのオーナー様がお悩みです。

延命補強の期間:10年~15年で考えてみる

鉄部塗装のメンテナンス塗り替え風景

「限定延命」にも期間が必要なので、ここでは「10年~15年ほど」を維持期間として考えてみます。下記が、建物寿命と延命のバランスです。

  • 建物全体の寿命: あと10〜15年で建て替え?解体?を予定している
  • 過剰支出のリスク: 30年持つ工事は不要。使わない耐用年数にお金をかけるのがムダ
  • 最優先事項: 入居者の安全確保と、入居率維持に必要な範囲だけを修繕

つまり、完璧な修繕や交換ではなく、期間限定の実用的な補強が収益確保につながると弊社は考えておりまして、ご賛同されるオーナー様から高評価をいただいております。

ただし、延命補強は美観の維持はできないので、ここがご判断のポイントかと思います。

ご相談例:鉄骨設備の延命工事

アパート建物の外観写真

ご相談の概要:物件情報とお悩み

  1. 築年数:約35年の木造アパート
  2. オーナー様のご要望:「あと10〜15年使えればいい」
  3. 予算:最小限に抑えたい
  4. お悩み:鉄骨階段・共用廊下の錆び、穴あきによる強度低下

アパート廊下の錆び腐食

共用廊下を下から見上げると、廊下床を支えるデッキプレート(凸凹形状の鐵板)が見えますが、ここが錆びてしまい、部分的に欠損しています。

※デッキプレートとは、廊下のモルタル床を支える鉄製の「受け皿」で、薄い肉厚(1,5mm程度)で作られています。劣化すると床の強度が低下し、利用者のケガにつながります

梁鉄骨の錆び穴

共用廊下の構造フレームとなる「胴差し鉄骨」が錆びてボロボロになっています。

※胴差し鉄骨とは、廊下の外周鉄骨のことで、前述のデッキプレートを端部から支える構造鉄骨です。劣化すると床抜け事故につながるリスク要因になります

廊下部の鉄部がボロボロ

廊下の床から見える、鉄骨にも強い腐食欠損が見られます。

上記の症状は、いずれも廊下床面を支える鉄骨老朽化が原因で発生します。このまま放置すると、廊下の床が抜ける事故となるリスク要件を満たすので工事が必要です。

参考:アパートの廊下の床が抜け男女2人が落下:ぶんぐのぶろぐ様

工事方針:期間を決めて、優先順位を明確化

  1. 最優先:人的被害に直結する箇所(強度不足の危険個所)
  2. 次優先:浸水が原因で急速に劣化が進む箇所
  3. 対象外:美観の問題、すぐにはトラブルにならない腐食

オーナー様から、建物はあと10年か15年くらいで使えればいいという工事方針をいただいたので、建物の維持年数から逆算して補強の優先順位を立てます。優先されるのは人的被害の回避です。

人的被害のリスクを最低限カバーして、以降は様子を見ながら対処することことにしました。

実践:コストダウンの鉄骨補強工事

鉄骨廊下への鋼板補強

デッキプレートへの鋼板溶接補強

デッキプレートの腐食している部分だけを鋼板で補強します。鉄骨設備は腐食したところだけをピンポイントに修復できるので、このようなコストダウンの補強が行えます。

錆び腐食補強のための鋼板溶接

補強鋼板によって強度維持する工事

構造フレームの「胴差し鉄骨」(雨どいに隠れて腐食に気付けなかった)の腐食も、緊急性の高いところだけを補強鋼板でカバーしました。

この工事で削減できた費用

仮に、全面交換ともなれば工事費用(200万円以上)、生活問題(居住者やご近隣への生活不便)が生じてしまうので現実的な解決策とはいえません。補強工事であれば数十万円の工事で済むので80%くらい工事費を削減したことになります。

機を大きく回避します。これらの鋼板補強工事と以降の定期敵なメンテナンスをすれば、かなりの延命効果が期待できます。

節約した費用で、耐水措置もできる

モルタル廊下への浸水

緊急事態の鉄骨だけを補強して、節約できた費用を「耐水措置」に使えることも大きなメリットです。廊下床への浸水(腐食の原因)を抑止するための耐水措置に費用を回せるので、費用対効果が高いです。弊社では、耐水措置に長尺シートをお奨めしています。

参考:長尺シート(タキストロン):タキロンマテックス

長尺シートとは複層ビニール構造となっており、浸水抑止のほかに、苔などの滑り防止にもなります。ただし、床面への浸水をブロックすることで、稀に雨水が床に残ることがあります。

廊下へのタキストロン施工

タキストロンの施工風景。既存廊下の下地調整を行ってからシートを敷設。端部にコーキングシールをして雨水の浸入ルートをブロックします。これで鉄骨の腐食スピードが大幅に低下し、今後10〜15年の延命が可能になります。

外階段の踊り場

こちらは鉄骨階段の踊り場部分。モルタル端部は湿気で苔が生え、内側の鉄骨は腐食危機に晒されたままです。

踊り場から階段にかけてタキステップとタキストロン

踊り場にはタキストロン、そして階段の段板にもタキステップを施工して雨水侵入をブロックします。これで鉄骨腐食スピードを抑えることに成功します。まだまだ魅力的なアパートとして活躍してくれます。

コストダウンの目安(参考値です)

修繕された鉄骨設備

「どれくらい安くなるの?」とご質問を多くいただきますので、あくまで参考として読んでください。一般的な全面改修との比較は下記です。

工事内容 全面改修 限定延命工事 削減額
鉄骨廊下・階段 約500万円 約120万円 約380万円
耐水・床面 約100万円 約50万円 約50万円
合計 約600万円 約170万円 約430万円

年間家賃収入:600万円(例えばです。仮定。)
延命工事費用:170万円
支出回収期間:約3~4ヶ月分の家賃(全面改修なら約16ヶ月分)

→10〜15年使う前提なら、十分に回収可能なメンテナンス策といえます。ご参考までに。

交換工事は最終手段。お気軽にご相談ください。

出張溶接補修

「鉄骨がボロボロだから全部直さなきゃ」と考える必要はありません。残りのアパート運用期間に合わせて工事をすることがスマートです。

延命工事が向いているオーナー様

  • あと10〜15年で建て替え・売却を予定している
  • 修繕コストをできるだけ抑えたい
  • 美観よりも実用性優先
  • 入居者の安全は確保したい
  • 入居率は維持・向上させたい

私たちは30年以上、鉄骨設備の補修工事を行ってきた専門業者です。小さな会社なので現場調査は有償(5,500円)となりますが。鉄骨腐食トラブルはお気軽にお問い合わせください。

要約Q&A

Q: 限定延命工事とは何ですか?強度は安心になりますか?
A:例えば、あと10〜15年だけ建物を使う前提で、期間を決めて、必要最小限の箇所だけを補強する工事です。安全性確保に絞り込んだ工事となります

Q: 限定延命工事が可能な期間は?
A:これまでの補修履歴や、腐食ダメージに影響するので、具体的な数値では回答が難しいです。ただし、30年以上などの法的耐用年数を超えた維持は困難といえます

Q: 全体交換工事と比較してどれくらい安くなるの?
A:あくまで目安ですが、全体工事と比べて30%~50%程度のコストダウンになることが多いです

Q: どのようなオーナー様からのお問合せが多いですか?
A:築25〜40年程度のアパートオーナー様が多いですが、劣化状況や補修履歴が異なります。いずれの皆様も、低コストと実用性を模索してご相談をいただくことが多いです

Q: 補強後のメンテナンスは必要ですか?
A:はい、必要です。補強工事をどこまで行ったかによって、メンテナンス期間も変わってきますが、例えば、鉄部塗装の塗膜寿命は7年前後なので、この時期が定期的メンテナンスの目安となります

Q: 補強をDIYでできないか?
A:程度によっては可能です。ポツポツと鉄表面に錆びが出ているくらいであれば、DIYが得意な方なら作業できます。ただし、鉄骨に穴が開いているなど、構造に関わる腐食は専門業者に依頼すべきです。