この記事を読んでいただきたい方:
鉄骨階段の補修を検討しているが、どこに注目すべきかわからないオーナー様、鉄骨階段の安全性や構造上の問題に関心のあるオーナー様、鉄骨階段の「ササラ桁」の場所や機能について把握しておきたいオーナー様向けの記事です。
塗装の剥がれや錆びといった表面的な劣化は比較的気づきやすいものです。しかし、本当に注意すべきは、階段の「骨格」にあたる構造部に発生する、目に見えにくい問題です。
例えば、鉄骨階段の上り下りで「きしみ」のような違和感を覚えたことはありませんか?、階段構造のSOSサインかもしれません。特に、階段利用の安全を支える「ササラ桁」に注目してください。
ササラ桁がしっかりしていれば、有事にも柔軟に補修対応できます。
「きしみ」の原因はササラ桁のズレでした
腐食調査でわかった、より深刻な構造上の問題(ササラ桁)
最初は、鉄骨階段の経年劣化(錆びや金物パーツ)のご相談で伺いました。しかし、よくよく調査を進める中で、気づきにくい構造的リスクを見つけました。それが鉄骨階段のササラ桁のズレでした。
外階段を裏側から見ると、段板(ステップ)を支える「アングルピース金物」が外れかかっているのがわかります。
アングルピース単体の腐食であれば補修方法はシンプルで、補助溶接や部分公開で対処できるのですが、この現場では、アングルピースが外れかかっているのはササラ桁がズレ始めているからでした。
段板とササラ桁の間に「数ミリのすき間」があります。そのままにしておくと、ササラ桁がじわじわ外側へ開き、すき間が広がっていくので、最終的に段板を支えきれなくなる可能性があります。構造バランスに偏った荷重や負荷がかかったままの階段にたまに見られる症状です。
以下、問題ポイントと解決ポイントを整理します。因果関係を明確にすることで、ピンポイントに工事できるようになります。
- 問題ポイント:ササラ桁のズレ
(1)段板を支えるアングルピースが劣化(錆び)
(2)上記の影響から、ササラ桁と段板にすき間ができて、階段の形状が維持できなくなる - 解決ポイント:ササラ桁矯正
(1)ササラ桁をできるだけ元の位置に戻して溶接固定
(2)アングルピースを修正
(3)補正構造バランスが戻り、階段を引き続き使えるようになる
ササラ桁補修工事の実例 ~復旧工程~
段板のアングルピース補修と平行して、ササラ桁の位置矯正(完全に戻るかは状況次第ですが、できるだけ戻します)をします。その後、矯正位置で溶接を使って再固定します。
この工事では必要に応じて、ササラ桁のズレる力を抑止すべく、ササラ桁の根元部分をコンクリートで巻いて固定しました。
これで鉄部修理はひと段落。次の工程に移ります。
ササラ桁補修工事の実例 ~延命工程~
補強した鉄骨の性能を長期にわたり維持するため、延命保護をしていきます。
鉄部塗装(ウレタン塗膜2層):
表面のサビや旧塗膜を完全に除去(ケレン)した後、2液エポキシ防錆(下塗り)、ウレタン塗料(中塗り・上塗り)の計3層からなるな保護塗膜を形成します。これは美観のためではなく、酸素や水分を遮断し、鉄骨を酸化から守るための工程です。
段板耐水の長尺シート:
鉄骨腐食の最大の原因である雨水の侵入を防ぐため、段板の表面を耐水性の高い長尺シートで浸水ルートを遮断します。
まとめ:構造部(ササラ桁)に注意しましょう
鉄骨階段のメンテナンスは、単に塗装を塗り替えるだけでは不十分です。「ササラ桁のズレ」のような、構造部の隠れた問題は、業者の診断がなければ見過ごされがちです。
重大な事故が発生する前に、専門業者の視点で階段の健全性をチェックすることをお勧めします。構造部の問題を早期に発見し、適切に対処することが、利用者の安全と建物の資産価値を守る上で最も重要なことです。外階段の修理でお困りの際はお気軽にご連絡ください。
参考:既存段板を活用した延命修理もございます
要約Q&A
Q:「ササラ桁」は、階段のどの部分?
A:階段の段板(ステップ)を両側から支えている構造フレームです。ササラ桁情報はこちら
Q:「ササラ桁」がなぜズレる?ズレると危ない?
A:経年劣化原因か、施工時の問題か、偏った負荷がかかった階段だと腐食によって接合部にすき間ができてズレることがあります。ズレが始まると元に戻ることはなく、放置するとササラ桁と段板が離れてしまい、段板が落下する危険性があります
Q:どんな状況だと注意が必要か?
A:鉄骨階段を上り下りする時に「きしむ」「グラつく」と感じることがあったら、ササラ桁か段板、どちらかに問題が生じている可能性があります
Q:「ササラ桁」がズレたらどう直すの?
A:工具を使って、できるだけササラ桁を健全な位置まで矯正して、その状態をキープするために溶接で固定します。その後、付帯する補修工事を進めます
Q:鉄骨階段(設備全般)のメンテナンスは、ペンキを塗るだけでいい?
A:築年数の浅い建物であれば塗装だけでも効果的ですが、10年、15年と経過していくうちに経年劣化を塗装だけでは解決できなくなることがあります。また、補強をしないで塗装をしてしまうと、どこが劣化ポイントなのかわからなくなるので、塗装前に補修することを意識したほうが良いと思います