この記事でわかること:
メンテナンスをしないまま老朽化した鉄階段に対して、交換とは異なる、コスト優先の延命補修工事の方法や条件がわかります。

アパートやご自宅の鉄骨階段、こんなお悩みありませんか?:
- 階段の踏み板がグラついて入居者の安全が心配・・。
- 錆びがひどいけど、交換費用が高額で悩んでいる・・。
- 工事中の入居者への影響を最小限にしたい・・。
- 鉄骨階段の寿命が気になるが、まだ使い続けたい・・。
交換しなくても大丈夫。延命補修の可能性が残っているか、調べてからにしませんか?
目次
外階段が錆びる原因は、雨に濡れるから。染みるから。

屋外の階段が、室内の階段より錆びやすい理由は明確ですね。風雨に晒されているからです。もっと簡単にいえば、「雨に濡れるから」です。
ただし、雨水による錆び被害の影響は、実は「鉄本体ではなく、床部分で使われることがあるモルタル」の方が厄介だったりします。
床モルタルへの浸水(染みていく)がどうして厄介なのか

鉄骨階段では、踏板(ステップ)や踊り場にモルタルが敷かれているタイプがあります。このモルタルの劣化が腐食による強度ダウンと深い関係があります。腐食が進行する仕組みは下記です。
- 床モルタルにひび割れが発生
経年劣化により床面にクラック(ひび)が生じる - 雨水が鉄板に到達
ひびから雨水が侵入し、踏板の鉄部(スケッチの赤い部分)に達する - 錆びが発生・膨張
鉄板が腐食して膨張し、さらにひびが広がる。1の状況を繰り返す。 - 強度低下・グラつき
1~3の繰り返しで腐食が加速。荷重に耐えられず、踏板や床が抜ける懸念。
この悪循環を15年以上放置すると、床面崩落事故リスクにつながります。

参考:アパートの2階廊下の崩落。男性が3メートル転落:北海道ニュース
階段のメンテナンスといえば、溶接や塗装をイメージしますが、床モルタルへの浸水対策をしていないアパートが多いと思います。
鉄階段の補修方法、交換との違い?

腐食の進んだ鉄骨階段の危険性を回避するには、大きく分けて「交換する」か「補修する」という二択になります。それぞれにメリットデメリットがあります。
以下に簡単にまとめます。
一般的な解決方法:完全交換
- 工法:既存の階段をすべて撤去。新しい階段に入れ替え
- 付帯作業:階段撤去の影響(外壁補修や基礎工事、産廃処理)の付帯工事が発生
- 工期:長期間(早くても1週間。1ヶ月かかることも)
- 費用:高額(数百万円〜)
- 居住者負担:工事中、居住者様の一時退去が必要になる可能性
- おすすめ建物:30年以上の建物運用計画であれば最適
弊社の解決方法:延命補修
- 工法:既存の階段の危険部位をピンポイントで補修する
- 付帯作業:補修工事範囲に応じた付帯工事で済む
- 工期:短期間(早ければ1日。範囲によっては数週間)
- 費用:交換工事の10%~50%程度で節約
- 居住者負担:工事中、居住者様の一時退去は必要なし
- おすすめ建物:15年未満の建物運用計画であれば最適
※腐食状況に応じては、補修でカバーできない可能性もゼロではないです
オーナー様が工事を考えるとき、工事期間中の入居者様へのケアや、ご近隣への配慮、工事費用など、いろいろなご心配が脳裏をよぎると思います。もちろん、完全に交換した方が確実な安全確保ができますが、建物の残存年数で計算すると赤字になってしまうことがあります。
「交換か?補修か?どちらが正解なのか」は「ご資産の維持年数」で考えれば良いと思います。維持年数はまちまちなので補修費用の相場というものがなく、オーナー様は自分の建物のことだけを考えれば良いわけです。
実践!溶接補修工事:写真つき施工例

※補修工法はダメージ具合によって変わります。今回ご紹介するのは工法のひとつです。
古い踏板をそのまま残して、チェッカープレート(縞板鋼板)を被せて溶接します。この工法のメリットは「工事期間の短縮・使用制限の軽減(ほぼ無い)・既存鉄部の負荷が最低限」である点です。結果的に「工事費用の削減」と「入居者様、近隣住民様のご負担軽減」につながります。

新しい踏板を、既存のササラ桁と溶接して一体化します。赤茶色になっているのは溶接した部分を保護する防錆塗装の色です。このあと仕上げ塗膜を施して完成です。

既存の階段のまま、新しいパーツを組み込んだ補修工事ですが、しっかり生まれ変わりました。

廊下も同様に、危険性の高い部位を優先して、部分的な交換で済ませます。
屋根の荷重を分散するため、既存の手すりから屋根を支える補強鉄骨を増設しました。このことによって、廊下鉄骨への屋根荷重の負担を軽減し、寿命を延ばす効果があります。

補強鉄骨が、屋根鉄骨を支えているのがわかります。
実践!耐水補修工事:写真つき施工例

鉄骨腐食の原因である「浸水」を予防する工事では、長尺シート(タキストロン)を使って廊下床面を保護します。
長尺シートによって、モルタル面が物理的に覆われるので浸水抑制に大きく貢献します。結果、鉄骨強度の延命となります。
施工店が教える、長尺シートの良いところ
- 既存のモルタルをそのまま使うので、短工期
- 防水塗装と比べて、入居者様の不便(廊下を歩けないなど)が最小限
- 雨水を物理的にブロックし、鉄骨の寿命が延びる
- 耐久性10年以上、メンテナンスは7年ごとのシーリング打ち替えのみ
長尺シートは、新築の建物では防滑性能や意匠性で有用ですが、補修工事では違う役割をもって延命に貢献するアイテムになりますので、おすすめです。

鉄骨と長尺シートのすき間に雨水が入らないようにコーキングシールを充填します。この作業でシート端部からの雨水浸入をブロックします。
実践!廊下のデッキプレートのピンポイント補修

廊下を下から見上げると見える「デッキプレート(凸凹形状の鉄板)」。この製品は床面のモルタルを支える役割があります。雨水浸入で腐食したデッキプレートは、腐食の強いところをピックアップして補修することができます。
廊下の床面モルタルが老朽化すると、デッキプレートが真っ先に錆びの被害に遭います。今回の工事で長尺シートを敷設したので、デッキプレートへの浸水リスクも大きく改善。これで補修工事はすべて完了です。
補修工事にまつわる「費用」のこと

工事は、だいたいどれくらいかかるの?というご質問をいただきます。具体的な工事費用は、現地を確認しないとわからないですが、おおよそ下記がお見積に必要な情報になってきます。
- 錆び腐食の進行度合い
- 階段・廊下の規模、大きさ
- 設定する補修範囲
- 工事以外の要素(距離や足場環境、ご近隣や居住者様事情)
- 建物の維持年数
交換に比べて費用を抑えられる(50%~90%くらいが節約目途)ことは確実です。重要なのは「建物をあと何年運用するか」です。たとえば、あと10年運用予定なら全面交換ではなく延命補修が現実的でしょう。あと30年運用予定なら補修で解決するこが難しいかもしれません。無駄のない補修プランを選びましょう。オーナー様ごとに最適解は異なります。
下記は、アパートの年間家賃収入が600万円円。建物維持を10年~15年程度としたば場合で、ざっくりと試算したのが下記の表です。
| 工事内容 | 全面改修 | 限定延命工事 | 削減額 |
|---|---|---|---|
| 鉄骨廊下・階段 | 約500万円 | 約120万円 | 約380万円 |
| 耐水・床面 | 約100万円 | 約50万円 | 約50万円 |
| 合計 | 約600万円 | 約170万円 | 約430万円 |
仮に、170万円で補修工事をした場合、約3~4ヶ月分の家賃(全面改修なら約16ヶ月分)で回収できることになります。
もちろん、全面交換よりも、老朽化対策は今後も必要になるわけですが、予想できない社会情勢や人生のイベントに合わせて、コストを割り当てる考え方も現実的だと弊社は考えます。
補修工事にまつわる「成功ポイント」のこと

補修工事の特徴は、補修範囲設定によって「安かろう悪かろう」になることです。工費を抑えれば、それだけ今後の運用リスクと向き合う必要があります。以下に端的にまとめてみます。
理想は、錆びの原因にも対処すること
本来、鉄骨の溶接補強だけでは延命効果は不十分です。溶接した鉄骨を塗装で守ること、鉄骨への浸水を抑えることが、延命への必須条件です。
❌ 失敗する工事の例:
- 鉄骨補強だけして、塗装をしない、耐水措置をしない
- 塗装だけして鉄骨補修をしない
⭕ 延命効果を発揮する工事の例:
- 鉄骨溶接補強 +鉄骨塗装+耐水措置を実施
(溶接は鉄骨強度を底上げする役割。塗装は鉄部の酸化保護の役割。耐水は酸化原因を抑止する役割なので、それぞれ工事目的が違う)
とはいえ、ご相談をいただく案件によっては「あと半年もてばいい」という、スポット的なご要望もあります。この場合は、塗装も耐水も除外することもあります。
鉄骨補修は独自のアイデアと技術が必要です。お気軽にご相談くだください。
要約Q&A
Q:補修工事に必要な期間は?
A:規模にもよりますが、塗装や耐水含めて1〜2週間程度で終わることが多いです。全面交換に比べて大幅に短縮できます
Q:工事中、入居者は階段(廊下)を使える?
A:はい。既存設備に肉付けしていく工事なので、利用制限は最低限になりますし、入居者様ありきで工程を組みますのでご安心ください
Q:見積は無料?
A:いいえ。有償です(5.500円)。理由は、弊社には職人しかおらず、現場を休まないといけないからです。
Q:この補修であと何年もちますか?
A:条件によりますが、適切な施工とメンテナンスで10〜15年以上の延命を見込んだご提案をすることが多いです。
Q:条件とは?
A:主に下記となります。
・錆び腐食の進行度合い
・階段、廊下の規模や大きさ
・設定する補修範囲
・工事以外の要素(距離や足場環境、ご近隣や居住者様事情)
・建物の維持年数
