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鉄骨腐食の解決が設備維持の根本です

この記事を読んでいただきたい方:
鉄骨の腐食でお困りの方(建物オーナー様)に、腐食の原因や補強対策の方法をご紹介します。鉄骨設備を長く使うためのコツを記載しています。

外部鉄骨の現状(鉄骨サビ度:★★★★☆)
「塗装は定期的にしているが鉄骨腐食の補修はしてない」とアパート大家さまからご連絡をいただきました。確認してみたところ、テープや詰め物をして塗装をしている箇所が多くありました。これでは鉄骨の強度ダウンは止まりません。

外部鉄骨の補修方法:
鉄骨廊下と階段、反対側のバルコニーも補修が必要でした。廊下は「梁鉄骨」や「根太鉄骨」の補強をすることで延命させて、サビの原因となる耐水問題を解決します。

この工事の相場費用について:
鉄骨の腐食ダメージの具合や工事条件がまちまちであるため、工事費用も現場ごとに異なります(現場調査が必要です)。お見積依頼等お気軽にお問合せください。

テープで隠された「さび穴」をご存じですか?

テープを剥がして発見された「さび穴」

いきなりの拡大写真ですが、この写真は鉄骨廊下の側面にあった「さび穴」です。アルミテープで貼られて隠されていました。塗装工事は3年前にしたそうです。つまり、3年前の塗装工事では「さび穴」を放置したまま終わっているということです。

この状態でサビ問題は解決されたといえるでしょうか。当然「NO」です。テープに塞がれ、通気性を失った鉄骨は、内側でサビが拡大します。時間が経過するほど手痛い工事費用が必要になります。

鉄骨サビの補修補強をせずに塗装すると、後...

では、さっそく鉄サビの解決を始めます。

ボンデ鋼板による溶接補強を行う

ボンデ鋼板で鉄骨を溶接補強

ボンデ鋼板(メッキ処理された鉄板)を使って「さび穴」を修復していきます。

具体的には、アルミテープをすべて撤去して「さび穴」を露出させたら、上からボンデ鋼板を被せて溶接します。

ちなみに、この溶接補修をした鉄骨は「胴差し鉄骨」と呼ばれる、廊下鉄骨の重要な構造部です。この補修作業を行うことで、錆びた根太鉄骨に「鉄の絆創膏」を貼った状態になります。鉄骨の腐食補修の基本技です。

「束(つか)」で廊下にかかる荷重を分散させる

補強された胴差し鉄骨

補強された胴差し鉄骨を下から支える「束(つか)」を増設します。

この「束」の役割は「廊下にかかる荷重を分散させて腐食ダメージを軽減させる」ことです。

腐食(錆び)が侵攻すると廊下にかかる荷重を支え切れなくなります。このまま放置すると廊下の床が抜ける事故が起こります。今回の補強工事では、既存の鉄骨を活かしつつ「束」を増設して廊下への荷重負担を減らすことにしました。結果的に廊下全体の荷重は分散されて大幅な延命が見込めます。

鉄骨梁は「全体で補強して背骨にする」

鉄骨梁の増設

廊下の建物側に鉄骨梁を増設します。ポイントは「廊下の端から端まで梁を通す」ことです。部分的な梁増設は、局所的な効果しかありません。廊下全体に梁鉄骨を通すことで、廊下に一本の「背骨」ができるイメージです。鉄骨の延命効果が高くなります。

上記は廊下補強においては定石といえる工法です。なぜかというと、鉄骨廊下のサビでダメージを真っ先に負うのは「胴差し鉄骨」や「根太鉄骨」だからです。

ほかにも「鉄骨梁の増設」を使って廊下を補強した工事例をご紹介します(下記リンク)。

鉄骨廊下の現状(鉄骨サビ度:★★★★☆)...

廊下鉄骨の補強工事

建物側と外側、両サイドに鉄骨梁を通して「サビ腐食でボロボロになっていた根太鉄骨」は息を吹き返します。赤茶色になっている部分が補強増設された部分です。

新たな骨組みで鉄骨廊下を支える

既存の排水パイプなどの網目を縫うように補強を加えていきます。

手摺の根元に「詰め物」がある・・?

手摺の根元に詰め物パテ

こちらは、バルコニーの手すりの根もとの写真。

大きく空いた「さび穴」に何か詰め物をして、その上から塗装をしています。あまり言いたくありませんが、この対処はいただけませんね・・。

鉄骨補修の必要性については「塗装業者(防水業者)さんの対応」や「どこに頼んでいいかわからない」「コストの問題」などで先延ばしになってしまいがちです。しかし、ここを後回しにすると設備維持に必ず問題が出ます。しっかりと鉄サビの補修をしましょう。

ベランダ手摺の溶接補修

先ほどの「詰め物」の部分を溶接で補修します。具体的には、腐食した部分だけを同じ規格の鉄骨に交換して修理をします。

腐食した手すりの部分的な交換

「詰め物」をされた部分だけを入れ替えて溶接完了。赤茶色になっている部分が新しくした鉄骨。色褪せた部分が既存鉄骨です。仕上げ塗装すれば補修跡は見えなくなります。

手すりを丸ごと交換しなくても、このような補修をすれば鉄骨は再生します。

廊下の床はタキストロンで耐水処理

鉄骨廊下にタキストロン

鉄骨廊下の床面(モルタル)に機能性床材タキストロンを施工します。

廊下の鉄骨サビの原因のほとんどが床面からの浸水です。タキストロンは複層シート構造なので床面からの浸水を抑える利点と、工事時間の短さゆえに、入居者様の歩行制限を短縮できる優れものです。コストも塗膜防水と変わりません。

モルタルの下地調整(ヒビ埋め作業など)を行ったあとに、タキストロンを施工します。上の写真はタキストロンを半分に折ってある状態。ここから接着作業を行います。

アパート廊下にタキストロンを施工

タキストロン施工後の写真です。

これで床面からの浸水はブロックされて外観も良くなります。また、防滑性能(表面に凸凹がある)のため雨天時に滑りにくくなります。タキストロンの端部シールを定期的に打ち替えるだけで、廊下鉄骨は10年以上の耐水効果を維持できます。

バルコニーは塗膜防水で対応

ベランダの塗膜防水準備

バルコニーの床面は鉄板(板金)となっていました。鉄板の継ぎ目から雨水が浸入してバルコニーの木下地を腐食させていました。

タキストロンの施工が困難な場所では塗膜防水を行います。

ちなみに、排水溝もボロボロでさび穴が多数空いていたので、工場で排水溝に合わせたパーツを作って補修します。

塗膜防水

床面の防水ができました。排水溝も作り替えたので、バルコニーの木下地は雨水から守られます。

鉄骨階段はタキステップでサビ予防

タキステップ3W

鉄骨階段はタキステップを施工。タキステップは「タキストロンの階段版」です。

踏面の凸凹した下地の調整(ヒビ補修とプライマー)をしたあとにタキステップを施工します。タキステップは「耐水」「消音」「耐摩耗」「耐候性」「抗菌」など、たくさんのメリットを与えてくれます。

これで鉄骨設備の腐食補強は完了です。大幅に延命されました。

まとめ

今回の補修工事では、鉄骨廊下と階段、バルコニーと複合的な工事を行いましたが、いずれも「鉄骨サビの補修」からスタートして「耐水」をゴールにしています。建物設備の外観を良くするだけでは、本来の目的である「設備の維持」とイコールにならないからです。

老朽化の原因となる「腐食」をしっかり解決して、補修工事の費用にコストパフォーマンスを求めていくべきだと当社は考えます。

防水工事や塗装工事はな何のために行うのですか?資産の維持のためですよね?では、資産の維持を邪魔しているものはなんですか?それが「腐食」です。ここを解決しないまま上からフタをして安心していませんか?

鉄骨設備の腐食延命についてお気軽にご相談ください。